ふたり暮らし。妄想が現実になったお話【結婚指輪】
シルバーとプラチナの違いも知らなかった若い頃
母がアクセサリーをあまりつけない人だったせいか、私もそういうものに興味が出ないまま大人になった。高校の時にピアスを開けたので、チタンは安くてゴールドは高いということは覚えたけれど、シルバーとプラチナの違いはずっと知らず、プラチナの結婚指輪という言葉をどこかで見聞きして、「結婚指輪はプラチナがいいのか〜」と漠然と思っているだけだった。
でも、結婚指輪には憧れがあった。父の指にはまる結婚指輪がとても素敵に見えていたことと、「一生身につけるたったひとつのアクセサリー」というのがすごくいいなと思っていたのだ。
(ちなみに母は太ってしまい、指輪が入らなくなったそう。笑)
まだ夫と結婚のけの字も出ていなかった時から、私は「結婚指輪はこんなのがいいな」と勝手に妄想していた。世の中にはピンクゴールドなるものがあると知り、絶対ピンクゴールドがいい!と思った。でも、夫もつけることを考えるとちょっと可愛すぎるので、ツートンにしたらどうかと考えた。
両親の結婚指輪が、プラチナに細いゴールドの縁取りのついたツートンカラーだったので、真似しようと思ったが、もっと華奢なデザインもいいなと思い始めた。ふたりが寄り添っているような、支え合っているような、そんな素敵なデザインにできたら、指輪を見るたびに幸せな気持ちになれそうだ。
一軒目で出会った指輪
結婚が決まり、そろそろ指輪を見に行こうという話になった。ジュエリーに疎い私たちは、結婚指輪をどこで買えばいいかまったく検討もついておらず、とりあえず下見のつもりで近場のデパートに向かった。
デパートに入り、すべてのジュエリーショップを覗いて廻るつもりで、最初に目についた4℃に入ることにした。疎すぎる私たちは当時4℃の読み方もわかっておらず、「なんて読むんだろう?4度?そんなわけないよね」「なんかの頭文字とかじゃない?」「三寒四温みたいな?」などと恥ずかしい会話をしながら店に入った。
お店の方が結婚指輪のコーナーに案内してくださり、ひとつ目のショーケースを覗いてみると、そこには私が脳内で勝手に思い描いていたデザインの指輪が鎮座していた。
私の脳内デザインを、夫には口頭でざっくりと説明していたため、その指輪を見た夫も「おっ!?これ…」と驚きながら指差していた。
もう運命の出会いだと思った。
あまりにも妄想通りの指輪だったので、もしかしたら雑誌やCMなどで無意識のうちにこの指輪を見かけていたのかもしれない。とにかく出会えてよかった!
私たちが「これください」と言うと、お店の方は当然驚いていた。入店してまだ3分くらいだったからだ。「他のものはご覧にならなくてよろしいですか?こちらと似た感じのものもございますよ」と言って、何点か取り出して見せてくださったが、心は動かなかった。
一軒目の1点目で理想の指輪に出会ったため、私たちの結婚指輪探しは本当に3分で終了した。もっとあちこち見て何日もかけて探すものだと思っていたので、自分でもびっくりしたけれど、運命というのはそんなものかもしれないと納得した。笑
納期が式ギリギリだった
購入手続きをしている時に式の日取りを訊かれたので答えると、「それならギリギリ間に合いますね。よかったです!」と言われたのできょとんとした私たち。
私たちが、今日初めて指輪を下見に行こうという話になり、この店が一軒目だったのだと言うと、お店の方は心底驚いた顔で、「ええっ!一軒目ですか?これが初めてなんですか?」と言った。
ちゃんとした指輪を買うこと自体が初めてだったので、サイズに合わせてオーダーメイドするものだということがわかっていなかった私たち。その場で買って持って帰るつもりでいたのである。笑
「裏にお名前の刻印をさせていただいたり、女性側のリングの裏にはブルーの石を嵌め込むサービスもしております。出来上がるまでに2ヶ月半ほどお時間をいただいております」
と言われて本当にびっくりした。2ヶ月半!?ギリギリ過ぎる!ふたりの休みを合わせるだけでも大変だったので、もし今日来ていなかったら、式には間に合わなかったことになる。
私たちの話を聞いて最初は驚いていた(呆れていた?)お店の方だったけれど、「運命的な出会いというのは案外そういうものかもしれませんね。そんな素敵な出会いに立ち会うことができて私も嬉しいです。ありがとうございます」というようなことまで言ってくださった。
ゼクシィを読んでみたかった
私の仕事が忙しかったため、その頃はなにもかもバタバタしていた。大掛かりな結婚式なんてやっている暇はなく、式は身内だけでサササッと行うことにした。
(暇があったとしても面倒くさくてやっていなかった気もするが。)
結納もなし、婚約指輪もなし、すでに同棲していたため環境の変化もなし。結婚すること自体をうっかり忘れてしまいそうな日々だった。
結婚してしばらく経ち、私の仕事が落ち着いて時間ができると、本屋さんでゼクシィが目につくようになった。「そういえば一度も買わなかったな〜、読んでみたかったな〜」と思った。
結婚を控え、ゼクシィを読みながら指輪やドレスのデザインをあれこれ迷いつつ、幸せな日々を過ごす…という女の子憧れの時期は私には訪れなかった。笑
そういえば、私はウエディングドレスも2着目で即決したのだった。試着が面倒くさすぎて、1着目を着て「これにする」と言った私を、式場の方たちを含めその場にいた全員が止め、渋々2着目を試着して決めたのだ。
1着目より2着目のほうが似合っていたのでそれにしたのだけれど、母は不満そうだった。「こんな機会、一生に一度なのに。もっと他にもたくさんあったのに。葉月の面倒くさがりはもう病気ね」とその後もぶつぶつ言われる羽目になった。
式場の方にも「私の経験上では、間違いなく最短記録だと思います。笑」と言われた。
世間の評判はイマイチらしいけれど
ここ数年、なんだか4℃の評判が悪い。ネット上では「貰うとテンションが下がるブランドの筆頭」とまで言われており、クリスマスやホワイトデーの後には、4℃のアクセサリーがメルカリなどで投げ売りされているのだとか。
4℃の結婚指輪を超気に入っている私としては複雑な心境である。大人気ブランドでみんながみんな同じ指輪をしているのもなんとなく嫌だけれど、ここまで不人気過ぎるのも悲しくなってしまう。どうにか頑張って汚名を晴らしてほしいものである。
私はこの指輪が大好きだ。なんて可愛いんだろう、なんて素敵なんだろう、と今でも見るたびに幸せな気持ちになる。一生つけていたいので太らないように気をつけようと思う。笑