ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

思い込みの魔法

ふたり暮らし。思い込みの魔法。

食事制限中のクリスマス

10代の頃、クリスマスの前後はバレエの発表会があった。それが終わると年明けすぐにコンクールが控えていたため、世間の人がおいしいものを食べている年末年始に、私たちはつねにお腹を空かせていた。泣

 

ある年のクリスマス、リハーサルを終えて帰宅する途中でショッピングモールに寄った。何の用があったのか忘れてしまったけれど、友達の誰かが何か買いたいと言って寄ったのだと思う。クリスマスのモール内は家族連れでにぎわっていて、どこもかしこも可愛い物やおいしそうなものであふれていた。

 

フードコートの前を通りがかった時、一緒にいた友達のひとりが、急に「ミスド食べたい!」と言い出した。でも誰も相手にしなかった。普段から飢えていた私たちは、誰かが唐突に「あーーー〇〇食べたい!!」と叫ぶことにも慣れていて、一種の発作症状なのでほっとく癖がついていたのだ。笑

 

でもその時のその友達は、「ねえ!食べようよ!クリスマスなんだからさ!」と言ってフードコートの前で立ち止まってしまった。みんな、「えぇ…?本気…?」と思いながらも、「どうしよう…食べちゃう…??」と目をきょろきょろさせていた。

 

「いつもがんばってるんだし、ドーナツひとつぐらい食べてもいいよね!」と誰かが言い、そうだそうだと全員続いてミスドの前に並んだ。どこかで知り合いに見られていやしないかとドキドキしながらそれぞれドーナツを選び、席についた。

 

席についてからも、どこかから先生が見張ってるんじゃないかとか、誰かの親に見つかったら告げ口されるんじゃないかと被害妄想を膨らませつつ、久しぶりに食べたオールドファッションがものすごくおいしかったことを覚えている。

 

魔法の言葉

罪悪感たっぷりでドーナツを食べ終えた時、ドーナツ食べたいと言い出した友達が、今度は「らーめん食べたい!」と言い出した。さすがに全員反対した。これ以上はヤバイと。

 

でも友達はよっぽどうっぷんがたまっていたのか、すんごいしつこくて、だんだん私たちも「クリスマスなんだからいいよね…?」という気持ちになってきてしまった。
(意志の弱い集団だ…)

 

で、結局みんなでらーめんも食べた。さすがにひとり1杯は食べすぎなので、2杯だけ頼み、それを5人か6人でシェアして食べた。なんとも悲しい光景である。笑

 

スープまできっちり飲み干したあと、ひとりの子が「明日のレッスンが怖い…」と言った。コンクールが近いとレッスンの前に体重測定があるからだ。みんな思っていたけど食べている間は口に出さなかったのに、その子がそう言ったことでせっかくの楽しいムードがお葬式のように暗くなってしまった。

 

そうしてみんなが一瞬静まり返ったあと、最初に誘ってきた元凶とも言える友達がこう言った。

 

「こんなのでこの私が太るわけない!って思ってれば大丈夫だから!」

 

みんな笑いながら「はぁ!?」と言って本気にしていなかったけれど、翌日の体重測定では、無事に全員怒られずにクリアすることができたのである。
(全員朝から飲まず食わずでいたに違いない。笑)

 

思い込みは大切

あの時の友達のセリフを、私は今でも時々思い出す。昔みたいに体重を気にしたりはしていないけれど、今も一応太らないように気をつけている。

 

焼肉を食べたあとなどは、「これくらいでこの私が太るわけない!」と暗示をかけ、せっかくの楽しい時間をネガティブな思い出にしないようにし、翌日は体重計に乗らない。笑

 

思い込みって大切だ。

「こんなのでこの私が太るわけない!」
「こんなことでこの私がめげるわけない!」
「こんなことでこの私がだめなわけがない!」

あのクリスマスの日以来、私たちの間ではなにかと上記の言い回しをするようになった。自分自身に言い聞かせたり、友達同士で言い合ったり。最初はただの合言葉みたいな感じで笑いながらただ言うだけだったけれど、だんだんその言葉がお守りみたいになっていった。

 

本番前に言ってもらうと緊張がほぐれたし、呪文のようにつぶやくことで心を落ち着けることもできた。「この私が○○なわけがない!」と思い込むことは、思っていた以上に効果があったと思う。

 

つい最近では、「この私が花粉症になんてなるわけがない!」と何回も暗示をかけたので、たぶん私は花粉症にはなっていない。はず。