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妄想が現実になったお話【オパールのネックレス】

ふたり暮らし。妄想が現実になったお話【オパールのネックレス】

小説の中で出会ったネックレス

私は普段、ジュエリーにはあまり興味がないのだけれど、若い頃からひとつだけ、いつか欲しいなと思っていたものがあった。それがオパールのネックレスだ。

 

「とろりとした乳白色の、一粒のオパールのネックレス」

 

これは私の好きな小説に出てくるネックレスで、小説の中では老齢のピアノ教師の女性がいつもつけているものだった。しわだらけのゴツゴツした指で胸元のオパールにそっと触る老齢の女性。その先生の美しい白髪や、着ている服、シミとしわのある痩せた胸元(描写にはなかったけれど)が、私の頭の中で鮮明に思い描かれた。

 

いいな、と思った。私もそんな素敵な女性になりたいな。

 

結婚10周年で、夫が記念に何か買ってあげると言ってくれた時、私は迷わず「オパールのネックレスが欲しい!」と言った。スイートテンダイヤモンド(例えが古い。笑)をイメージしていた夫は面食らっていたけれど、私はダイヤより断然オパールが欲しかった。

 

ところが、理想のオパールのネックレスはなかなか見つからなかった。日々、オパールの知識だけがどんどん増えてゆく。

 

オパールは、乳白色の物よりも赤や黒の物のほうが価格が高いこと。私の求める白いオパールはプレシャスオパールと呼ばれ、日本人の肌色に似合うので国内では特に人気があるとのこと。オパールは湿度の変化に弱いこと。スピ的なところでいうと、邪の気を吸収する性質があるので、持ち主の心の状態が表れやすいこと。などなど…

 

私は自分の想像通りの、華美な装飾のない、しずく型の華奢なネックレスがどうしても欲しかった。でも全然出会えないので、もういっそのこと御徒町で石を購入し、自分でお店に持ち込んでネックレスに仕立ててもらおうかと本気で思い始めていた。

 

その日は突然訪れた

結婚10周年の年が間もなく終わろうかという頃、ついに理想のネックレスと出会う日が訪れた。

 

その日は、久しぶりに夫と車でイオンに来ていた。ひと通り用事を済ませてから、最後に食料品を買い込み、両手に袋をぶら下げて駐車場に向かおうとしていた時、なぜかジュエリーショップのTSUTSUMIが目に留まった。そしてそのまま、吸い寄せられるようにして入ってしまったのだ。買い物袋を持ったままで。笑

 

そこにTSUTSUMIがあることは以前から知っていた。でも、お店に立ち寄ったこともなければ、立ち寄ろうと思ったこともなかった。そこを通りがかる時はたいてい食料品を買い込んだ後だったし、「イオンで記念のジュエリーが買える」という認識がなかったのだ。

 

でもその日はなぜかTSUTSUMIに吸い寄せられ、そこでまさに思い描いていた通りのオパールのネックレスに出会うことができたのである。

 

お店の方は、スーパーの袋を両手に下げた夫婦がふらっとやってきて、ほかの物には目もくれずに「これください!」となったのでちょっと驚いていた。笑

 

妄想も現実になる

まるで小説の中から飛び出してきたかのようなそのネックレスを、私は夫とでかける時には必ずつけている。繊細な石らしいので、真夏の長時間の外出や、雨の日などは避けているけれど、大切なものだからとしまい込まないようにしている。

 

いつか自分もあの小説のピアノ教師のように白髪の似合う素敵な女性になって、「これは結婚10周年に夫に買ってもらったのよ」と誰かに話すのが夢だ。笑

 

「思考は現実になる」という言葉があるけれど、「妄想も現実になる」と付け加えたい。経験上、楽しく日常的に妄想しておくといい気がしている。