ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

常連の難しさ

ふたり暮らし。常連の難しさ。

顔を覚えられるのがいいこととは限らない

接客業をしていると、世の中には本当にいろんな人がいるんだなと実感することが多い。

 

お店には常連のお客様が何人もいるのだけれど、常連扱いをすると喜んでくださる人と、常連扱いした途端来なくなってしまう人とがいる。年齢が上になるほど喜び、若い世代になるほど嫌がる傾向にあると思う。

 

ちなみに私自身は常連扱いしてほしくないタイプだ。お店の人に「いつもありがとうございます」なんて言われると、その後しばらく足が遠のいてしまう。
(決して若くはないが。笑)

 

私の働くお店は、ランチセットなどリーズナブルなメニューもあるけれど、基本的にコース料理を出すお店なので、なるべくお客様の顔と名前を覚えるように言われている。でも、よっぽど見た目に特徴があるとか、とんでもないクレーマーだったりでもしない限り、2〜3回会っただけのお客様は覚えられない。

 

ところが、たとえ2~3回しか来店していなかったとしても、お客様自身が「自分は常連だ」と思っている場合もあるため、そういう人に入り口で予約のお名前を伺うと不機嫌になってしまう。

 

難しいのは、「常連」の定義が人それぞれなこと。

 

予約の電話で「◯◯だけど、◯日◯時にいつもと同じ席で!」と、言い捨てて電話を切ろうとしてくる人(調べるとまだ3回目の来店だったりする)と、1年以上毎月来てくださっているのに、毎回初めてかのように丁寧な予約の仕方をしてくださる人とがいる。

 

来店した際も、自分は顔パスができるとでも思っているのか、名前も言わずにズカズカと予約席に向かう人もいれば、明らかに何度も何度もお会いしているのに、「◯時に予約している◯◯ですが…」と毎回丁寧に伝えてくださる方もいる。

 

カフェで働く知人が、「入ってくるなり、『いつもの!』って言ってくる人が結構いるけど、お前のことなんて覚えてねぇよ!っていつも思う」とよく愚痴っているが、私はそれに共感しまくっている。笑

 

メートルドテルのいるような高級店ならいざ知らず、数回しか行っていない街中のお店でもし顔を覚えられていたとしたら、自分がよっぽど特徴的な見た目をしているか、あるいは面倒な問題客として認識されていることを疑ったほうがよい。ごく普通の常識的なお客様だった場合、店員はそうそう顔まで覚えていられないものだ。

 

常連であることを知られたくない場合もある

同じ店に何回も通っていると、店主や店員と顔見知りになってしまう。私はそれが苦手だ。昔、よく友達と行っていたカフェに夫と初めて行った時、店主に「ご主人ですか?」と訊かれたことがある。何気ない会話に見えるけれど、これってとっても危険な質問だと思う。

 

もしそのカフェに私を誘ったのが夫だったとして、夫が「葉月ちゃんが好きそうなカフェ見つけたよ!」と得意げだったりした場合、私は友達と行ったことがあるとは言わずに、「え~!行ってみた~い!」と演技をする可能性がある。カフェに着いてからも、「素敵なお店だね~!」と初めて来たフリをしているかもしれない。

 

女性の場合、相手の男性を立てて嘘をつくことが多々あるので、たとえ常連であっても、客側からその情報を出さない限り、店側から常連扱いをするのは危険だ。「今日もいつものでいいですか?」と訊くなんてもってのほか。
(バーのマスターに一見愛想がないように見える人が多いのは、こういう理由があるからだろう。目線を必要以上に合わせないようにしつつ、客のタイプや状況を観察しているのだ。)

 

結局、私はそのカフェからは足が遠のいてしまった。

 

お店の外で会ったら知らない人同士

近所で働いているせいか、たまにお客さんとお店以外でばったり会ってしまうことがある。でも、相手は店員である私を覚えていても、上述した通り、ごく普通のお客様だとこちらは覚えていないため、ふいに知らない人から「どうも~」なんて挨拶をされるとびっくりする。その場は作り笑いでどうにかやり過ごし、あとから一生懸命誰だっけと思い出す。笑

 

私が客側の立場だったら、お店以外で顔見知りの店員さんを見かけても絶対に挨拶はしない。私とその人は、お店という舞台で客と店員を演じているだけの関係に過ぎないと思っているからだ。でも、世の中にはそう思わない人もけっこういるらしい。むしろ、私のような考え方をする人のほうが少数派な気がする。

 

何が正解かわからないまま、今日も私は仕事に行く。笑