ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

ひとりの時間がゼロになった経験。

ふたり暮らし。ひとりの時間がゼロになった経験。

発狂寸前だった自宅療養期間

おととし夫がコロナにかかり、後遺症として重度の倦怠感が続いたため、約2カ月のあいだ自宅療養となった。

 

私たち夫婦は普段とても仲がいいほうだと思うのだけれど、夫が毎日ずーーっと家にいることで私の神経は簡単に参ってしまった。後遺症で辛いのは夫のほうなのに、私は夫に心から優しくできず、イライラしてばかりだった。

 

最初はよかった。病気とはいえ、熱もなく、食欲もまあまああったので、普通の休日と同じように家でゴロゴロ気楽に過ごしていた。夫を見送る必要がないので朝は寝坊し放題だし、一日中パジャマなので洗濯物もたまらない。夫も安静にしている分には症状も出なかったので、通院で出かけること以外、とくに大変なこともなかった。

 

でも、1日中一緒の生活は2週間が限界だった。

 

家中を盛大に散らかして物の整理をしようと思っても、夫が寝ていると思うと気を使う。部屋の掃除をしたくても夫がいる場所はできないし、シーツやまくらカバーも洗えない。夫がいつトイレを使うかわからないので便器の漂白もできず、黒ずみができてしまった。

 

自分のペースで家のことができないのは、想像していた以上にストレスだった。そしてなにより、「家の中でひとりきりになれる時間がないこと」が、私には耐えられなかった。

 

私はひとりっこな上に両親が共働きだったため、子どもの頃から家でひとりで過ごす時間が多く、自分でも気づいていなかったけれど、どうやらその時間がないとダメな人間になってしまっていたらしい。

 

とはいえ、病気の夫を家から追い出すわけにもいかない(当たり前)し、私が外へ出かけてもストレスはなくならない。だって家で自分ひとりの時間がほしいのだから。(我ながらわがまますぎてあきれる。)

 

私のそんな様子を見て、夫は本当に申し訳なさそうにしていた。そんな夫の様子を見ると私も胸が痛んでしまい、ふたりとも鬱々とした日々を過ごしてしまった。

 

夫にはどうしようもないことなのに。いつも一生懸命働いてくれているのに。後遺症でしんどい思いをしているのは夫なのに… くっそわがままな私のこんな気持ちをぶつけても、夫は逆ギレなどせずに優しく接してくれた。涙

 

仲の良さは関係なかった

私は夫のことが大好きだし、心から愛している。毎朝仕事に出かけて行く夫を、いつも未練がましい思いで見送っているし、自分のパートがない日などは、夕方になると夫の帰宅を心待ちにしているぐらいだ。

 

それでもずっと一緒にいるのはダメだった。これはゆゆしき問題だ。将来必ずやってくる老後生活を、どうやり過ごしていけばいいんだろうか。

 

コロナ離婚という言葉ができたくらいだから、夫が自宅に長時間いることで、どうしようもないストレスを抱えてしまった主婦が多くいるのだろう。それまでは、「休日に夫が在宅しているのがストレス」という主婦の愚痴にはまったく共感できなかったのに、今はその気持ちが理解できるようになってしまった。

 

このストレスに、夫婦仲の良し悪しはどうやら関係ないらしい。

 

夫のほうはどうかというと…

私は短時間で働くパートタイマーなので、夫が自宅でひとりになる時間はほとんどない。トータルしても1週間でほんの数時間くらいだけである。

 

これまでに何度か夫に、ひとりの時間が少なくてつらくないのか訊いたことがある。夫はそのたびに「べつに平気」だと言う。

 

なんで平気なんだろう。不思議でしょうがない。夫が家にいる時、私は夫にべったり張りついていて、ゲーム中の夫にも何かと話しかける。ごはんももちろん一緒に食べるし、なんならスーパーやコンビニですら、夫が一緒に行ってくれないとひとりでは絶対に行かない。
(なんて鬱陶しい妻なんだろう。)

 

でも夫は大丈夫らしい。夫には妹がいるし、夫の母は長らく専業主婦だったそうだから、やはりそれも関係あるのだろうか。

 

私は友達と遊ぶよりも、おうちで本を読んだりお絵かきをしたり物語を書いたりして過ごすのが好きだった。逆に夫は外で友達と遊びまわっていたらしいので、それも関係あるのかもしれない。

 

とりあえず、夫がひとりの時間を切実に欲する人でなくて良かったと思うことにしよう。夫婦そろってひとりの時間を切実に欲していたら、たどりつく未来はきっと週末婚だ。

 

「亭主元気で留守がいい」
この言葉に共感するようになったら終わりだ、と思っていた若かりし日の自分に言ってあげたい。「お互い元気で時々留守がちょうどいいんだよ」と…