ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

お礼の品、感謝の品

ふたり暮らし。お礼の品、感謝の品。

お返しで頂いた物の末路

23歳の時、高校の友人が結婚した。仲間内ではもっとも早い結婚で、都合がつかず式に参加できなかった私は、母のアドバイスのもと、お祝いを贈った。生まれて初めて自分のお金を冠婚葬祭に使ったことで、大人の仲間入りをした気がして嬉しかった。

 

1ヶ月後、友人からお返しが届いた。ペアのお皿だった。その時はまだ実家で暮らしていたので、いつか結婚した時に使おうと大切にしまっていたのだけれど、いざ夫と暮らし始めてからそれを使おうと思うと、デザインがあまり好みじゃないことに気づいてしまった。

 

でも、せっかくもらったのだからと長い間持っていた。もらった当時は知らなかったけれど、有名ブランドの人気シリーズだったようで、数年前にメルカリに出した時には秒で売れてびっくりした。私はそのブランド自体を知らなかったので、これをチョイスした友人はすごくセンスが良かったんだなぁと感心した。

 

とはいえ、どんなに人気のあるシリーズであっても、持ち主の好みに合わなければ箪笥の肥やしになってしまう。人に食器をあげるって難しいんだな、といい学びになった。その後も、結婚祝いや出産祝いのお返しを頂く機会が何度かあったのだけれど、そのどれもが今は手元にない。

 

お祝いにお返しをするという文化は不思議だ。幸せをおすそ分け、ということらしいけれど、それが品物である必要はないよなーと思う。感謝の言葉だけで充分な気がする。

 

「お返しはいらないからね」と渡された結婚祝い

私自身は、バレエの発表会のどさくさに紛れて結婚したため、最初は結婚したことを生徒さんたちに黙っていた。でも、さすが女の子は目ざとい。すぐに結婚指輪をしていることに気づかれてしまった。笑

 

当然あっという間に噂は広がり、生徒さんたちにお祝いを贈らせてしまう羽目になったのである。こんなことなら、最初から自分で報告して、お祝いは辞退する旨を周知徹底させておけば良かったと後悔した。

 

お祝いをしてもらえるのは大変ありがたかったのだけれど、本音を正直にぶっちゃけると、お返しが超ーーーーーーー面倒くさかった。お祝いは学年やクラスごとに集めてくださっていて、ひとり2〜3000円の計算だったと思う。それらの小さなお返しをひとりひとりに用意するのがものすごく手間で、「大人ってめんどくさーーーー!」と心の中で絶叫していた。笑

 

そんな中、ひと学年だけ、「先生、お返しはいらないからね。最初からお返ししなくていい金額にしてあるから」と言ってお祝いをくださった方がいた。そのお母様は、よく言えばおおらか、悪く言えば超大ざっぱな、日頃から肩の力の抜けたお付き合いができる方だった。

 

バレエというお稽古事の性質柄、保護者の中にはものすごくきちんとした方が多くて、「先生のお祝いなんだからちゃんとしなくちゃ」「お祝いのマナーを娘に教えるいい機会だ」と考える方がたくさんいたと思う。

 

その大ざっぱなお母様も、お祝いを集金する時にいろんな意見を言われたりしたと思うけれど、伝統的なマナーを守ることより、私の手間を省くことに重きを置いてくださったのだ。それがとてもありがたかった。

 

たくさんあげて、たくさんもらう親世代

実家の母が贈り物好きなのはこれまでにも書いたことがあるが、それと同じ数だけ、母も人から物を頂いている。母の世代は、物の介在なしで人付き合いをするという考えはないのだろう。

 

私は基本、平日昼間のシフトには入らないのだけれど、以前、たまたま人が見つからなかった時、おそらく母と同年代か少し下くらいのパートさんのシフトを代わったことがある。

 

そうしたら、次にその人にお会いした時に、なんとお礼の品を頂いてしまったのである。当然遠慮したものの、きれいにラッピングまでしてある品物をむげに断るのも悪いと思い、結局受け取った。個包装のお菓子とハンカチだった。

 

コロナ禍でマスク不足だった時は、別の、やはり年上の世代の方から手作りマスクを頂いたこともある。まだ今の職場に入ってそんなにたっていない頃だ。「知り合いのお子さんに作るついでに大人用も作ったんだけど、よかったら使って」と。

 

結局、マスクもハンカチも一度も使わないまま処分してしまった。メルカリに出せば売れたのかもしれないけれど、ハンカチ1枚、マスク1枚のためにその手間をかけるのが面倒だった。

 

お土産文化

うちの職場にはお土産文化もある。

 

以前、大学生の女の子が旅先の話をしていた時、途中でハッとした顔をして、「あ!お土産買ってきてないから黙ってたんだった!バラしちゃった。」とちょっと焦っていたことがある。

 

すごく気持ちわかるなと思った。私も夫と旅行したことを職場の人には言わない(笑)。お土産を買う習慣がないからだ。

 

職場の事務所にはよくディズニーのお菓子が置いてある。学生さんたちがちょいちょい行っているようだが、毎回買ってこなくてもいいのに…と思う。大型連休明けには主婦のみなさんからのお土産も並ぶ。

 

地方出身の子などは、実家に帰省しただけで地元のお菓子を買って来てくれる。「繁忙期に休んでごめんなさい」という気持ちなのだろう。実家が遠い子を雇った時点でそんなことは店長も承知の上だ。面接でそういう話もしているだろうし、誰もなんとも思わないけれど、もしかしたら親御さんが、「いつも子どもがお世話になっています」という気持ちで持たせているのかもしれない。うちの親ならそうするだろう。たとえ私が拒否しても。

 

 

お祝いのお返しはお礼の言葉で十分だし、旅のお土産はお土産話だけで十分だ。お世話になっていますという気持ちは会った時に言葉で伝えればいい。ひとりだけそれを貫くのは勇気がいるから、みんなでいっせいにそういう世の中になればいいのにな、と思う。笑