ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

旅先のごはん

ふたり暮らし。旅先のごはん。

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引き寄せの神様は初回限定

私たち夫婦の旅はいつも無計画だ。急に思い立って出かけ、行き当たりばったりの旅となる。

 

行き当たりばったりとはいえ、旅先で絶対に外したくないのはごはんのおいしさだ。無計画なため、当然予約もしていなければ目星もつけていないのだけれど、自分が譲れないこだわりについて思い浮かべ、あとは直感で「ここ!」と選ぶと、いつも不思議とおいしいお店に引寄せられる。
(旅先なので大体なんでもおいしい説は否めないが。笑)

 

「私って引き寄せるの上手いな〜!」なんていい気になる私。でもそれはいつも初回だけ。その後もう一度同じ店に行くと、定休日とか臨時休業とか貸し切りだとかで入れないことが多い。

 

「定休日くらい事前に調べようよ」と言われそうだが、無計画な私たちはお出かけ自体が突発的なので、下調べしておく癖がついていないのだ。それでも最近は学習して、定休日をチェックしておくようにはなったのだけれど、なぜか行くと臨時休業だったり、貸し切りになっていたりで、お店に入れないのである。泣

 

「絶対にもう一度あの味が食べたい!」というお店は、もうそのお店自体を目的地にして、事前に予約するなどして計画を立てるしかない。計画を立てるのは予定にしばられる気がして大の苦手だけれど、どうやら私たちには「2回目運」というものがないようなので仕方ない。

 

おいしいものはおいしいお店の人に訊く

以前、私たちはおいしい干物のお店を探していた。海の近くの町ではあちこちで「お土産・干物」という幟や看板を見かけるけれど、多くのお店の場合、パッケージをひっくり返すとそこには添加物の表示がある。素朴でおいしい本物の干物にはなかなか出会えなかった。

 

たぶん、そういうのは観光客向けのお店ではなく、地元の人に長年愛されているようなお店に行かないとダメなのだ。

 

ある時、例によって例のごとく、直感でおいしいお寿司屋さんにたどり着いた私たち。いかにもこだわりの強そうなちょっと癖のあるご夫婦のお店で、とてもおいしかった。お寿司のおいしさは言うまでもなく、お醤油もお味噌もわさびも、添加物の刺激のしない、本物の味だった。
(そういうお店は意外と少ないのだ。)

 

ここのご主人ならいいものを知っているのでは!?と思った夫が、「この辺りでおいしい干物を買えるところはありますか?」と訊いてくれた。

 

飲食店の主にべつのお店について訊くのは失礼だったかも…と一瞬不安になったけれど、ご夫婦は「ありますあります!」と若干前のめりな姿勢で近所の干物屋さんを教えてくださった。「サバの味醂干しがとくにおいしいんですよ」「奥さんが東北出身の綺麗な方でね、お手製の塩辛がなかなかこの辺にはない味で人気ですよ」「あそこもうちと同じでご夫婦でやっていてね…」など、いろいろ教えてくれた。

 

教えてもらった干物屋さんは、メイン通りから外れた田舎道にポツンとあり、「干物」と書かれたささやかな幟が立っているだけの、知らない人は通り過ぎてしまうような小さなお店だった。

 

お店に入ると、女優の原日出子さん似の奥さんがにこやかに迎えてくださり、(この方が東北出身の綺麗な奥さんだな)とすぐにわかった。私たちがサバの味醂干しと塩辛を選んでいると、「どなたかのご紹介ですか?」と訊かれたので、「あそこのお寿司屋さんで…」と答えると、「やっぱりそうですか!いつもお客さんをご紹介いただくんですよ。うちもお客さんに、お寿司ならあそこよってお勧めしてるんです」と嬉しそうにおっしゃっていた。お互いの味を信頼できる、いいお付き合いをしているんだなと思うと、干物への期待度もぐんと増した。

 

家に帰って、さっそく干物を焼いて食べた。どれもものすごくおいしい。塩もいいものを使っているのがわかる。それまで私は味醂干しが苦手だったのだけれど、そこで買った味醂干しは甘ったるくベタベタしたものではなく、ふんわりと上品な甘さの、とてもおいしい味醂干しだった。

 

おいしいものは、おいしいお店のご主人が知っている。これは確実だ。ちなみに、このお寿司屋さんと干物屋さんも、私たちはもれなく2回目以降に外している。だから今は事前にちゃんとチェックしてから行くようにしている。笑

 

伊豆で出会った無添加イタリアン

少し前のことになるが、久しぶりに車で遠出した。目的は伊豆半島ドライブだ。海景色に飢えていた私は、久しぶりの雄大な景色にとても癒された。「海も山もあって、伊豆ってほんとにいいところだなぁ〜」と誰もが抱くであろう感想を抱き、やっぱ海の近くに一度は住みたいなぁと改めて思った。人気観光地なだけあって、おしゃれなお店もたくさんあり、見るだけでもすごく楽しかった。

 

昼は海鮮丼を堪能したので、夜は海鮮ものを使ったおいしいイタリアンが食べたくなった私たち。

 

イタリアンのお店というのは、どこの街にもたくさんあり、どのお店もそこそこおいしい。「え、おいしくない…」なんて店はイタリアンの場合、まずないと思う。でもその一方で、「おいしい!!」と心から思えるお店もめったにない、というのが私の持論である。

 

私はいつものように、想像力と直感力を使って一軒のお店を選んだ。今来た道を30分くらい引き返すと、ちょうど夜の開店に間に合いそうだ。行く道すがらお店のホームページを見ていると、そこには「ソースもすべて完全無添加、手作り」の文字が…!

 

ちょっと目を疑った。全部手作り!?大当たり過ぎるくらいに大当たりだ。よくよく読むと、「冷凍ピザの全国発送もしているが、ひとりで一から全部手作りしているため、納期に2ヶ月以上かかります」的なことが書いてある。これは期待が膨らむぞ…!

 

お店につくと、まだ開店前だった。こういう個人店の場合、客に夜の部の開店待ちをされると内心嫌がる人が時々いる。せっかくの休憩時間なのに急かされている気になるのだろう。

 

でもあたりには時間を潰せるスポットもないし、駐車場が3台分くらいしかないので停められなかったら困るため、駐車場でそのまま待たせてもらった。

 

お店の外観やお庭が素敵だったので写真を撮ったりしながらウロウロしていたら、お店のドアが開き、お待たせしましたの一言もなく、「はい、どーぞ!!何名!?」と、奥さん店員が顔を出した。(やっぱり気を悪くしている…汗)と思いながらも、可愛い内装の店内に入る。ちょっとメルヘンな感じでインテリアも素敵。きっとこの奥さんのセンスだろう。

 

奥さんのぞんざいな態度は置いておいて、 スープもキッシュもカルパッチョもサラダもピザもパスタもデザートも…お料理はどれもすごくおいしかった。素材のおいしさを引き立てる優しい味だ。ワインが飲みたくなるかなーと心配していたけれど、お料理だけで心から満足できる滋味深い味わいだった。

 

帰り際、わざわざキッチンの中からご主人が顔を出して挨拶してくれた。奥さんと違ってとても感じがいい。笑

 

ふと奥さんのほうを振り返ると、もう私たちのいたテーブルを片付け始めていた。早く帰れと言わんばかりだ。たぶんこちらが奥さんの態度にクレームをつけたところで、「うちが気に入らないならもう来ていただかなくていいんですよ」と開き直られるのがオチだ。みんながみんなそうではないが、こういうのは人気の個人店あるあるといえる。

 

でもまあ気持ちはわからなくもない。いくら営業時間内とはいえ、平日の17時台にたった1組だけのために接客するのは面倒なのだろう。私たちが行かなければほかにやりたいことがあったのかもしれない。

 

接客レベルはうちの店の高校生バイトの子の方がはるかに上だわ、と心の中で奥さんに嫌味を言いながら店を後にしたのであった。
(でもすごくおいしかったので奥さんは怖いけどまた行きたい。笑)