ふたり暮らし。パリの広告から考えさせられる「個性」。
世界でも買い物好きと知られている日本人
最近、Youtubeでミニマリストしぶさんの動画をよく観ているのだけれど、その中で、「パリで広告を打っても利益が上がらない。だから広告は出さないらしい」という話があった。
フランスの人は自分の個人的な価値観を重視する人が多いため、他人の言うことや広告に購買意欲を掻き立てられたり惑わされたりしない傾向にあるからだそう。
その動画のコメント欄に、
「自分がパリを旅行した時、大通りのよく見えるところに大きな広告があった。だからパリでは広告を出さないという話は間違っていると最初思ったのだけれど、よく思い返してみると、その広告は、日本語やその他の言語で書かれていて、フランス語ではなかった。あの広告は、フランスにあるのにフランス人のためではなく、フランスに観光に来ている日本人や外国人のためにあったのだ。」
というような内容の視聴者からのコメントがあり、「それ、私も聞いたことがある!」と思い出した。
パリに10年以上駐在していた知人も昔、似たようなことを言っていた。日本でも有名な化粧品メーカーの広告が、サントレノ通りにデカデカと貼ってあり、そのイメージキャラクターが有名ハリウッド女優だった。
知人は、「フランスにも素敵な女優さんがいっぱいいるのに、なんで自国のブランドのイメージキャラクターにアメリカ人を選ぶんだろう」と思ったのだそう。
そしてもっと不思議だったのは、その広告は英語と中国語と日本語バージョンがそれぞれあり、フランス語バージョンがないことだった。知人は、「世界的に有名な観光地だからだとは思うけど、それにしても日本語も出世したものよね。英語や中国語と同列になるなんて!」と嬉しくなったという。
喜んでいた知人の顔を思い浮かべると申し訳ないが、英語と中国語は当たり前として、その広告で日本語がその2カ国と並んで扱われていたのは、日本語が出世したからではなく、フランス人に日本人観光客が買い物好きだということを知られていたからだと思う。日本人相手に広告を打てば利益が上がるという確かなデータがあるということだ。
これって、果たして喜んでいいことなのだろうか?なんとなくバカにされているように感じるのは私だけだろうか。
捨てるものではなく、絶対に残したいものを選ぶ
ミニマリストしぶさんの最近の動画では、汚部屋住人の家の片付けにしぶさんが密着する、という企画がある。
その中でしぶさんはくり返しこうおっしゃっている。
「何を捨てようか考えるのではなく、絶対に残したいものだけを選んでください。」
自分が譲れないもの、絶対に捨てたくないものだけ残して、あとは捨てる。残したものが、その人のアイデンティティであり、個性であり、その人が人生で重要だと考えていることにつながってくるのだと。
その一方で、こうもおっしゃっている。
「捨てる時はただポンポン捨てずに、なぜそれを捨てるのかを考えてください。」
捨てる理由を自分で掘り下げて考えることで、自分の本当の望みや好み、性質がわかってくる。
色が気に入らない、形が気に入らない、似合わない、安かった、人に勧められた…捨てる理由はあるあるな理由ばかりなのだけれど、そのひとつひとつを掘り下げていくのを見ていると、「ああこの人はこういうのが好きなのね」とか、「この人はこういう人なのね」ということが、赤の他人である視聴者にもわかるようになっていく。
中には、ブランド品の空き箱や大量の服を全然減らせない人もいて、「そんなんさっさと捨てなよ」と観ていて焦ったくなるものの、その人なりにがんばって取捨選択する様子にしぶさんは根気強く寄り添っていて、結局大量の服を残したまま、断捨離を終える動画もあった。その人にとっては、そのブランド品やお洋服に詰まった思い出が、今の時点ではまだ必要なものということなのだ。
しぶさんのようなミニマリストに憧れてシンプルなものを買い揃えたのに、シンプルじゃないものを迷わず残している女性に、しぶさんは、「あなたはこういう派手な色や、柄物が好きなんですよ。だから今後はシンプルなものは買わないほうがいいですね。」と優しくアドバイスする。
その女性も、最初のうちは「私はしぶさんのようになりたい」「シンプルで何もないお部屋が理想」としきりに言っていたのに、最終的には「私はこの色が好き。こういうのが好き」と自ら派手な物たちを抱きしめるようおっしゃっていて、その変化というか、短時間での成長ぶりが素敵だなと思った。
片付いたお部屋は真っ白でフリフリの姫系ラブリーなお部屋で、その白いお部屋に、派手な服を着たご本人と、その方の大切な派手な物たちがものすごく映えていて、とてもとても素敵だった。
個性を大切に生きる
私は断捨離動画やリフォームものが昔から好きで、劇的ビフォーアフターとかもよく観ていたのだけれど、しぶさんのお片付け動画はそれらとは違う意味で、何度も観たくなる。
個性を大切に、というのはあちこちで見聞きする言葉ではあるけれど、なんとなく言葉だけがひとり歩きしているふしもある中で、しぶさんは、片付けを通して自分の個性を見つめ、大切にすることを本人の腑に落とさせてくれるのだ。
キツイ言葉や否定的な言葉を言うわけではなく、ただそばにいて、その人が物と向き合うのを手助けするだけ。その分時間はかかるけれど(1日で終わらない人も多い)、自分のことをよく理解することができ、それを今後の買い物や生活スタイルに生かすことができるようになる。
断捨離で人生を変えるというのは、まさにこういうことを言うのだな…と思う。
しぶさんご自身は、無駄なものを持たないで何もない余白をインテリアとして愛でる人ではあるけれど、片付けを終えた人に対しては、「(あなたの場合は)こういうものは買わないほうがいいですよ。」とアドバイスするだけ。自分の価値観を押し付けるようなことはしない。
だから、モノトーンや無印でまとめたミニマリストばかりができあがるのではなく、フリフリでド派手なおばちゃんができあがったり、パステルカラーの春色クローゼットができあがったり、昭和感万歳のインテリアができあがったりする。
改めて持ち物を見直してみると
しぶさんの動画に影響されて、ここ数日は持ち物の見直しをしている。
日頃から、「この家にはもう捨てるものなんて何もない」と思っていたけれど、しぶさんのアドバイス通り、捨てるものではなく絶対に残したいものに目を向けると、まだまだ捨てるものがいくつも出てきたので驚いた。
私はお洋服が好きなので、今ある服のほぼ全部が絶対に残したいものだ(一部、あまり好きじゃないけど必要、というものもある)。だからお洋服の数は減らせない。自分ではそこまでファッションに重きを置いていないと思っていたけれど、じつは私がとても大切にしているものだったのだと今更理解した。
逆に、趣味のひとつである本は、何冊か処分することになった。読書は趣味ではあるけれど、絶対に残したい本は意外と少ない。過去に何度も本の整理をしてきたけれど、今までは「捨てる本」に目を向けていたから「捨てるほどではないな」という本が残っていたのだ。
でも、「絶対に残したい本」に目を向けると、それ以外は処分してもいいのだと思えるようになった。私にとって絶対に残したい本は、何度でも手に取りたくなり、いつ読んでも心が満足し、この先も私を幸せにしてくれるだろうと確信できる本だった。
そして捨てると決めた本は、気に入ったけれど数回しか読んでいなかったり、1冊目が良かったからシリーズでなんとなく揃えてしまったけれど、2冊目以降はべつにそうでもなかったなというような内容の本だった。シリーズものであっても、その中の1冊だけが大切な本になる場合もあるのだと勉強になった。
処分対象の本はタイミングよく「初回のみ送料無料で引き取り査定します」というチラシが入っていたので、まとめて送ることにした。全部中古で買った本なので二足三文だと思うけれど、ゴミに出すより心が痛まないので非常にありがたい。
ミニマルに生きていく
ミニマリストとは必要最小限で暮らす人という意味だけれど、必要最小限の量は人それぞれ違うということが、改めてちゃんと理解できるようになった気がする。
私はミニマリストではないけれど、ミニマルに生きていきたい。
本当の意味で自分の個性を大切にして、他人の目を意識せずに選択できるように、これからも精進していこうと思う。