ふたり暮らし。解けなかった謎。
陽気なおばちゃんたち
職場に韓国人の女性4人組が来店した。全員気のいいおばちゃんたちだったが、日本語はもちろん、英語もまったく通じないため、席へ案内するところから意思の疎通ができずに苦労した。 文化の違いなのか、アジア人観光客は勝手にズカズカ入ってきて好きな席に座る人が多いのだ。
オーダーを取る時にも、何やら一生懸命こちらに伝えてこようとするのだが、韓国語はアニョハセヨとカムサハムニダしかわからない私。困った顔で苦笑いしてみせるぐらいしかできない。私の困り顔を見て、今度は全員がアレルギー表のエビを指さして「ノー!ノー!」と言い始めたので、「ノー?シュリンプ?」と訊いてみたところ、「イエース!イエース!!ノーシュリンプ!」と言いながらエビをポイポイ投げる仕草を全員でしてきた(笑)。ああ、エビを抜けってことねと思い、その場は事なきを得た。
その後も、そのテーブルを通りがかるたびに空いたお皿を無理やり手渡してきたり、飲み物のグラスを振っておかわりを要求してきたり、勝手に隣のテーブルに荷物を置いたりと、正直言ってマナーは全然良くなかったが、終始陽気でニコニコしている人たちだったので、あまり嫌な感じはしなかった。
役に立たない翻訳アプリ
しばらくすると、またあのおばちゃんたちが立ち上がって手招きしている。伺うと、 食べかけの料理を手で示しながら口々に何か言っているのだが、韓国語なので見当もつかない。私がさっきと同じ顔をしていると、ひとりのおばちゃんが翻訳アプリを使いだした。もっと早く使ってよ、と思いながら差し出されたスマホを覗き込むと、
「食事を無駄でしますか?」
と書いてある。翻訳アプリのくせに日本語として成り立っていない。
日本人の感覚で推理すれば、「食事を残してもいいですか?」かな?と考えてしまうが、絶対に違う。レストランの店員に対して「残しちゃってごめんなさい」なんて言うのは日本人だけである。とくに中韓の人たちは残し方も非常に汚い。昨今では「mottainai 」という単語が海外で認知されているくらいだし、この感覚は日本人特有のものなのだ。この人たちが言いたいことは絶対にこれじゃない。
瞬時にそう判断した私は、さらに推理を続け、「残ったものを持ち帰りたいのかも!」と閃いた。そういう観光客は結構多い。絶対にそうだ!と思った私は、「オーケイ!オーケイ!」と言って裏に行き、テイクアウト用の容器と新しい割り箸と袋を持っておばちゃんたちのところに戻った。
「玉」
得意げな顔で持ち帰り用グッズを手渡そうとした私を見て、さっきまで笑顔だったおばちゃんたちが一斉に「ハア…(;´д`)」という顔になった。どうやら違ったようである。名推理だと思ったのに。
するとまたさっきのひとりが翻訳アプリに向かって何かをしゃべっている。表示された文章はまたもや意味不明な文。どんな文だったか忘れてしまったが、さっきの文とは何のつながりもない文章だった。しかめっつらで画面を凝視している私を見て、べつのおばちゃんもスマホを取り出して何かを言った。そっちを見ると、今度は
「玉」
と書いてあった。もうお手上げである。表示されている言葉は日本語だが日本人には理解できない。食べかけのお皿と「玉」。金田一少年も悩ますレベルの難問だ。誰か助けて…
終わりよければすべて良し…?
おばちゃんたちはその後も韓国語でヤイヤイ言っていたが、私がまったく理解できないと悟ると、「もういいわ、あっち行って」という顔で食事を再開した。「シッシッ」こそされなかったが、雰囲気はまさにそれである。こっちもできる限り努力したのにこの仕打ち。ああ腹立つ。
とはいえ、お会計の時にはおばちゃんたちの機嫌もすこぶる良くなっており、みなさんニコニコしながら「カムサハムニダ〜!アリガト〜!」と言って店を出て行った。こちらもホッとして笑顔でお礼を言って見送った。
ふと見ると、レジ横の飾り棚に、お会計をしたおばちゃんがさっきまで持っていたペットボトルとレシートのゴミが捨ててあった。
もう…だから嫌い。韓◯人。