ふたり暮らし。物の見直しと処分。
くり返し読み過ぎた漫画
いらないものは引越し前に完全に処分してきたと思っていた。ところが、ここにきて再び断捨離にスイッチが入ってしまっている。きっかけはキッチンでお鍋を見張りながら漫画を読んでいた時だった。
私は4コマ漫画系が好きで、短時間にサクッと読めるところが気に入っている。ストーリー性のある漫画とか推理系の漫画は、ある程度まとまった時間がないと読む気が起きないが、4コマ漫画系はオチは知っていても、暇つぶしにちょこっと読むのにちょうどよかったのだ。
でも、あまりにもくり返し読み過ぎたせいか、今回は1ページ目を読み始めた瞬間に飽きてしまった。
ほかの巻やべつの漫画を読んでみてもダメだった。今うちにある漫画は、もう私の中での賞味期限が切れたのだ。引越しする時は迷わず連れてきたのに、じつはすでに手放す日へのカウントダウンが始まっていたのかもしれない。
私はその日のうちに、家にあったほとんどの漫画をジモティに出品した。
親の愛情がこもった物
コボちゃんが好きな私のために、実家の両親は読売新聞のコボちゃん部分だけを丁寧にスクラップして送ってくれる。それがかなりの冊数になったので、引越しが決まってすぐにすべてのページを写真に撮って、現物は処分しておいた。
両親の愛情がこもった物なので処分する時はちょっと抵抗があったが、その基準でなんでも残してしまうと、ひとりっ子の私の周りは物であふれかえってしまう。本に限らず、親からの贈り物は厳選して残していかなくてはならない。
今回、断捨離せずに残した漫画は2つだ。ミラクルガールズ全巻と、10年ほど前に大人買いしたセーラームーン完全版(当時の扉絵などもすべてフルカラーで収録されているやつ)だ。
とくにミラクルガールズは思い出深いもので、私は1巻を歯医者さんの待合室で初めて読んだ。それまで漫画といえば父の持っているちばてつやの漫画しか知らなかった私が、少女漫画というジャンルに出会った記念すべき1冊である。
最初は娘に漫画本を買い与えることに反対していた母が、私の説得に折れて最初の1冊を買ってくれ、その後は新刊が出るたびにおねだりし、ついには母のほうから「ミラクルガールズの新刊出たの?じゃあ帰りにパパに探して来てもらおうか」とまで言うようになった。
お小遣いで買うと約束していたなかよしも、私が風邪で寝込んだりすると「はい、おみやげ。元気になったら読んでいいわよ」と言って買って来てくれるようにもなった。
(母にとっても、「漫画は子どもの教育に悪いものじゃない」ということを身をもって学んだ本なのだと思う。)
途中、7巻だけがどこの本屋さんでも売っていなくて、父は私のために普段行かない少女漫画コーナーを散々ウロウロして探し回り、おそらく店員さんに「あのう…ミ、ミラクルガールズっていう漫画を探しているんですが…(照)」とか訊いてくれたのだろう。「新刊はまだ発売前ですよ」というオチだった。笑
9巻で完結なのだが、娘の成長とともに数年がかりで買い揃えたそれは、両親にとっても思い入れのある本なのだと思う。何回引越しても本棚にミラクルガールズが並んでいるのを見ては、「これ、まだ持ってるんだねぇ。もういいかげんに卒業したら?」と心にもないことを言う。私が大切にしていることを両親が喜んでいるのは顔を見たらバレバレなのに。笑
思い出の本には当時の感情もしまわれている
ミラクルガールズとセーラームーンは、私にとっては単なる「子ども時代に読んだ漫画」ではなく、幼児から少女へと成長していく年月を一緒に過ごした大切な仲間なのである。ページをめくるたびに当時の感情が蘇ってくる。
今回漫画以外の本もすべて見直したが、こちらは賞味期限の切れた本はなかった。今のところ、どの本も読み始めたらちゃんと没頭できるものばかりである。
小説やエッセイは大人になってから買ったものばかりだが、やはり読み始めると当時の感情や記憶が蘇る。大人になってからもいろいろあった。いいことも悪いことも。本によっては、初めて読んだ時の季節や空気の匂いまでをも思い出せるものもあり、その「本にしまわれている感情や空気」も本と同じくらい大切にしていきたいな、と思う。