ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

クリスマスの完全犯罪

ふたり暮らし。クリスマスの完全犯罪。

母からの宅急便

母から宅急便が届いた。

 

母からなんの事前連絡もなく唐突にクール便で食材が届くことはちょいちょいある。大変ありがたいのだが、こちらも冷凍庫の空き具合とかあるし、受け取りのために予定を変えるのが大変なので、「そんなに送ってこなくていいよ…」と機嫌を損ねないように控えめに伝えてはいる。
(もちろん母は聞く耳を持たない。)

 

今回はクール便じゃなく普通の宅急便で、しかも割れ物注意のシールが貼ってあったので嫌な予感がした。

 

今まで母が普通の宅急便で送りつけてきたものは、客用布団、ダウンコート、電気ケトルなどだ。客用布団については前回の記事に書いた通りだし、私は静電気恐怖症なのでダウンコートも着ない。日常で電気ケトルも使わない。もちろん母はそのことを知っている。「など」の物たちについても同様だ。

 

母は、相手が理由があって使わない物であっても、自分がいいな・便利だなと思ったら強引に使わせようとしてくるところがある。これは私が子どもの頃からそうだった。「すごくいいから」「すごく便利だから」「騙されたと思って使ってみなさい」は母の口癖だ。それで実際に母の言う通りにして良かったこともあるが、そうでないことも多かった。子どもの頃はそりゃ、こちらの人生経験が浅いので親の言うことのほうが正しいことが多かったが、私はいつまでも子どもじゃない。

 

でも母は、「ほらみなさい。ママの言う通りだったでしょ」となった時のことしか覚えていないのである。

 

憂鬱な贈り物

さて、今回は何を送って(送りつけて)くれたのかな…と思いながら箱を開けると、そこにはサンタのカンカンに入ったお菓子と、ライトのつくスノードームが入っていた。どちらもコストコのものだろう。先日実家に行った時に渡されなかったので、最初からサプライズプレゼントにしようと思って買ってくれていたのだと思う。

 

どちらもとても可愛い品物だ。昔の私ならすごく喜んだと思う。でも私はため息をつきたくなった。サンタのカンカンもスノードームも、母はきっと「どこに飾ったの?」と訊いてくる。「パパにも見せてあげたいから」と言って証拠写真も求めてくるはずだ。今までずっとそうだった。

 

私は自分が心から気に入った物でなければ家に飾りたくない。普段、クリスマスグッズは箱に入れて保管していて、「ここに入る分だけ」とキャパを決めている。今その箱はほぼ満タンだ。だから新しい物を増やす時には「今持っている物を捨ててでもほしい物を買う」と決めている。実際、お店でクリスマスの雑貨を見て「ほしいー♡」となっても、箱の中身を思い浮かべて買わずに帰ってきたということが何度もある。

 

つまり、その箱にサンタのカンカンとスノードームが入る余地はないのである。

 

ふたり揃ってプレゼント好き

母だけでなく、じつは父も飾り物をくれるのが好きな人だ。ふたりとも家の中を隙間なく飾るのが好きなので、きっと私も同じだと思っているのだと思う。何度も何度も「置くとこないからいらない」「引越しの時に壊れたら嫌だからいらない」と断っているにも関わらず、ガラスに入ったドライフラワーやら液体に入ったお花やら、ライトのついたお高い立体ジグソーパズル(しかもすでに父が組み立て済みという…)やら、はっきりいっていらんものばかりくれる。

 

受け取ってすぐに捨てるのはさすがに心が痛むので、しばらく飾ってはみるものの、それを見てもテンションは上がらない。むしろ下がる。最近は証拠写真を撮ったらすぐに処分しているのだが、それだって心が痛むし、何より手間だ。両親が遊びに来たりすると、「そういえばあの時にあげたアレ、飾ってないの?」と訊かれるので、「あー、季節ごとに飾り変えてるから、今はしまってあるよー」と嘘をつかなくてはならない。

 

ミニマリストしぶさんの動画でも、親や祖父母からの贈り物の処分に困っている人たちが出てくる。そういう人にしぶさんは、「キッパリ断るのも愛情」「自分があげた物で子どもが苦しんでいると知ったら、親だって苦しいはず」とアドバイスしているが、現実はなかなかそう簡単にいかないものである。

 

私の母の場合、キッパリ強めに断ると機嫌を損ねてグチグチ言い始め、最終的にはなぜか全然関係ないことでお説教される羽目になるので、黙って受け取っておいたほうが断然楽だ。父の場合は、断った時の淋しげな顔を私が見たくないというファザコン的理由によるものだ。どちらにせよ、物に託された親の愛情を受け取り拒否することは、子どもとしては非常にエネルギーのいることなのである。

 

完全犯罪の下準備

玄関のクリスマスコーナーにサンタとスノードームを並べ、証拠写真を撮った。

 

その後、サンタのほうは中身だけ貰って不燃ゴミに入れた。スノードームはジモティ行きだ。せっかくうちに来てくれたのにごめんよ…今度はもっと喜んでくれる人のもとで幸せになってくれ!

 

母にはお礼のLINEを。「いらないっていつも言ってるでしょ!いいかげんにしろーーーー!」と送りたい衝動を抑えて、「クリスマスプレゼントありがとう!さっそく飾ったよ」と真顔でポチポチ入力。証拠写真も添えて送信した。

 

あとは、クリスマスシーズンに親が遊びに来るのを阻止すれば完全犯罪成立だ。いつまでこんなことが続くのやら…。親孝行は楽じゃない。