ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

物の多い人のお片付け

ふたり暮らし。物の多い人のお片付け。

父がハマっているYoutube

先日実家に行った際、父が「最近よくYoutubeで家を片付けるやつ観てるんだよ」と言うので、えっ♡とうとう断捨離することにしたの?♡と喜んだ。以前しぶさんの話を母にしたことがあるが、父はまーるで興味を示さなかったのに。
(まあ母もだったが。笑)

 

私が「だれの動画?」と訊くと、「古堅純子さんて人だよ。知ってる?」と父。あー知ってる!昔からお片付け系の番組が好きだった私は、たぶん10年?くらい前、土曜だか日曜だかの朝の番組で古堅純子さんが視聴者の方のおうちをお片付けしているのを見ていた。瀬戸朝香さんがナレーションをしていた番組だ。

 

週替わりでお片付けのプロが登場するのだが、私は古堅さんの回がとくに好きだった。めちゃめちゃに散らかったお部屋でも、古堅さんの手にかかるとスッキリ片付く。古堅さんの歯に衣着せぬ物言いと明るくて温かい人柄に、土日の朝の憂鬱な気分が和らいだ記憶がある。そうか、古堅さんはYoutubeをやっているのか。

 

自宅に帰って、さっそく観てみた。古堅さんのお片付けは基本的に「捨てない片付け」だ。たくさんの物に囲まれながらもスッキリ暮らすことを目指している。どんなにとっ散らかったおうちでも、収納と家具のレイアウトを変えることでまるで魔法のように片づく様子には、お見事!としか言いようがない。

 

「本当に大切な物だけを選び取り、それ以外は手放す」というしぶさんの動画に慣れていた私は、最初、古堅さんの動画を観て物の多さにゾワゾワしていた。動画の中で古堅さんも「ちょっと物が多すぎる」「家具が多すぎる」とよくおっしゃっているが、ほんとにその通りで、家具と物で足の踏み場もないようなおうちがたくさん登場する。

 

しぶさんの出張お片付けは、言ってみればしぶさんの趣味の延長上にあるようなもので、Youtubeに出てくれる依頼者からしぶさんは報酬を受け取っていない。片付けるのはあくまでも依頼者本人で、しぶさんはそばについてアドバイスをするというスタイルだ。とはいえ、家具を移動したり掃除したりゴミを出したりと、肉体労働でも率先してやってくれるのだからすごい。

 

しぶさんはお片付けをビジネスにしているというよりは、今のところは依頼者と視聴者の双方に自分のメソッドを丁寧に伝え、生き方を変えるヒントを発信することを優先に考えているようだ。なので、以前記事にもしたように、なかなか捨てられない依頼者の場合は大変だ。しぶさんが何日も通うことになる。

 

古堅さんは逆で、しっかりビジネスとしてお片付けを請け負っている。たくさんのスタッフを引き連れ、決められた時間内にきっちり終わらせる。スタッフのみなさんと阿吽の呼吸で進めて行くその様子は、お互いを信頼し合い、みんなが依頼者のご家庭を助けたい!と思っているのが伝わってくる。

 

要る・要らないの決断はエネルギーと時間を使う。しぶさんは、なるべくまとまった時間を取り、集中してその作業を行うことを推奨している。古堅さんも、要る・要らないの決断にはエネルギーを使うとおっしゃっている。だからこそ、古堅さんのメソッドでは、「エネルギーを使う作業はとりあえず置いといて、まずは明日からの生活を整えましょう!ママが笑顔になれるおうちにしましょう!」と提唱している。

 

単身者や夫婦だけの依頼者が多いしぶさんに対して、古堅さんの依頼者は、小さなお子さんが複数いて夫婦共にフルタイムで働くご家庭が多い印象だ。

 

いっぱいいっぱいのママ

とくに印象的だった回に、高齢出産で小さなお子さんをふたり抱える共働きのおうちというのがあった。古堅さんが「(家事で)何がつらい?まずそこを解決しよう!」とママに訊くと、そのママは、「…ごはんもお風呂も洗濯も…全部つらい…」と消えそうな声で答えていた。

 

もう日々の生活でいっぱいいっぱいなのだ。心の堤防が決壊する寸前といった様子である。そんな状態の人に、溢れかえる物たちの要る・要らないの選別をするのは不可能だ。こういう状況の人には、しぶさんのメソッドは時間的にも精神的にもハードルが高いだろう。古堅式お片付けが唯一の救いと言っていいかもしれない。

 

(収納の)余白3割ルール」を提唱するしぶさんに対し、古堅さんは「収納はパンパンになるけど、その代わり生活スペースは広くなりますよ。お子さんもママもとりあえず今すぐ、笑顔で暮らせるようにしましょう」と提案する。
( とはいえ、物をこの先もずっと仕舞い込んでおけばいいと言っているわけでもなく、「生活が落ち着いて、ママとパパの心に余裕ができたら、おいおい物の見直しをしていきましょうね」と伝えている。)

 

当然だが、どっちがいい悪いなんてない。どちらのメソッドもそれぞれ必要としている人がいる。どちらのメソッドからも、学ぶことがあるなぁと思った。

 

でも父に目指してほしいのはそこじゃない

父から教えてもらった古堅さんのYoutube。父が好きで観ているぶんには構わないし、家具のレイアウトなどはとても参考になると思う。ただ、古堅さんの「捨てない片付け」は、今使っていないものを収納の奥深くに埋める方式だ。これを父に取り入れられてしまうと大変困る。

 

こういうしまいこむ片付けは、要る・要らないの選別をする時間のない人が応急処置的に行うのには適しているが、父のようにそろそろ「終活」に入ってもおかしくない年代の人がそれをやってしまうと、キツイ言い方だが、生きている間に取り返しがつかなくなる。あの世に行ったらもう、その埋められたゴミたちを掘り返すことはできないのだから。

 

物を捨てたくない気持ちはわかるが、少しでも若いうちに捨てなければ、それらの処分を背負うのは、父が何よりも大切にしてきたはずの娘である。一番の宝物であるはずの私に、大量のゴミをびっしり埋め込んだ一軒家を遺さないでほしい。

 

古堅さんのYoutube、父のような年配者にとっては要注意かもしれない。