ふたり暮らし。字幕派、吹き替え派。
Amazonオリジナルドラマ「まほうのレシピ」
初めてこの作品を観たのは、もう7年近く前になる。タイトルからして子ども向けだとわかるし、その頃はお料理にもさほど興味がなかったが、仕事をやめて時間を持て余していたため、暇つぶしになんとなく観始めたのがきっかけだった。
この「まほうのレシピ」という邦題は絵本のようにわかりやすくて可愛らしい。子どもにはワクワク感を与え、大人の童心をもくすぐる秀逸なタイトルだと思う。
洋画などの邦題のすごさは度々ネット上でも話題になっているが、その中でも「きみに読む物語」という邦題をつけた人のセンスはすごい。日本語ってほんとに素晴らしいなと思うし、日本語と日々向き合っている人の感性というのもまた、大きな財産だなぁと思う。
( 凡人の私は「ぼくの日記帳」とか「思い出の日記帳」ぐらいしか思いつかないけども。)
いきなり話が反れたが、この「まほうのレシピ」は初めて観たその日に私のリピート病を重症化させ、以来これまでに何十回もくり返し観ることとなった。
吹き替えが好き
洋画や海外ドラマにおいて、普段の私は断然吹き替え派である。吹き替えだと字幕を追わなくていいので、俳優さんの表情演技を見逃すことがない。海外の俳優さんはちょっとした目の動きひとつで語るので、一瞬たりとも目を離したくないのだ。
それに、プロの声優さんの演技はすごい。まさにキャラクターに命を吹き込み、その内面を引き出すことのできるお仕事だと思う。
まほうのレシピの声優さんたちも全員プロの方たちで、話題集めの素人声優などはひとりも出てこないので安心して観ていられる。とくに主人公のひとりであるハンナ(向かって左側の子)の声を担当する田中真奈美さんの演技はとってもいい。ハンナ役ご本人の演技もすごく上手なのだが、田中真奈美さんの吹き替えによって、ハンナの美点である女の子らしさや優しさ、思いやりの深さなどがより一層引き出されている。
この作品は、シーズン1〜4と、子役の成長による世代交代でキャストを入れ替えた「まほうのレシピ ミステリーシティ編」の1シーズン、計5シーズンが公開されている。子ども向けドラマではあるが、大人のほうがハマってしまうくらい、細部までよく考えられたお話だ。
リピート病の私は何年にも渡ってシーズンすべてを通して観まくってきたため、だいたいのセリフを覚えてしまったのだが、ここに来て図らずもその習癖が役に立っている。
英語学習
海外ドラマで英語学習をする人は多いと思うが、私も最近はその一環でディックウルフ監督のシカゴシリーズを英語音声で視聴している。
でも、大人むけのドラマはみなさんものすごく早口だし、スラングも出てくるし、イントネーションにクセがあったり、知らない単語も多かったりと、多少のリスニングができても結構大変である。
その点、まほうのレシピは子ども向けなので、汚い言葉は出てこないし、発音もクセがなく、難しい単語やイディオムもあまり出てこない。 その上でセリフが頭に入っているので、英語音声で観ても、漏らさずに聞き取ることができるのだ。
この作品を英語学習に使うことになるとは予想もしていなかったが、まさにリピートしまくった過去の私グッジョブ!である。
邦題と日本語字幕に求められることの違い
長年ずっと吹き替えで観てきた作品だが、英語音声で観始めたことで、「これの日本語字幕ってどんなんだろう?」と興味がわき、表示させてみた。
結果、セリフと字幕とでは伝わってくるニュアンスがまったく違うということがわかった。
吹き替えのセリフは多少のアレンジはあるものの、本物の脚本にかなり忠実だ。でも、字幕は最低限の文字数でまとめなければならないので、当たり前だがだいぶ端折られている。無駄のない簡潔な表現は、大人向けの作品ならあまり気にならないが、子ども向けのドラマでは冷たい印象を与え、子どもたちそれぞれのキャラクターの良さが消えてしまっている。
素晴らしい邦題の数々から、日本語というのはその言葉を見た人の想像力を膨らませ、日本人の感性に訴える表現をするのに優れているのだとわかる。だから、文字数に厳しい制限のある字幕とはあまり相性が良くないのかもしれない。
どの言語同志でも完全な翻訳はないと言われるが、それでも言葉の端々から発せられるニュアンスまで感じ取ることができる吹き替えは、要約された字幕よりも理解度が深まるのかもしれないなぁと実感した。
セリフが元の脚本に忠実であればあるほど、俳優さんの演技も生かされるというもの。だからやっぱり私はこれからも吹き替え派だ。