ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

海老蔵との約束

ふたり暮らし。海老蔵との約束。
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右京さんのいそうな小料理屋

成田駅周辺は活気のある場所だ。新旧混在した飲食店が建ち並び、夜は翌日が平日であっても満席になっているお店がたくさんある。外国人も多いし、元気な日本のサラリーマンもとても多い。今まで都内も含めていろんな場所に住んできたが、成田は食のレベルがかなり高い街だと思う。

 

1〜2ヵ月ほど前から、お散歩のたびに気になっていたお店があった。古い長屋を改装していて、その周辺は昔ながらの建物に改装を加え、レトロでお洒落なお店が軒を連ねている。外灯や門灯も和のデザインで統一されており、風情あふれる成田らしい素敵な場所だ。

 

長いこと工事をしていたので、「どんなお店ができるんだろうね〜?」と夫と言っていたのだが、先日前を通ったらオープンしていた。店の外には手書きのメニューが貼ってあり、どうやら海鮮を中心とした小料理屋のようだ。外から覗くと、まるで奥に右京さんが座っているんじゃないかと思うようなコの字型カウンターがあり、和服姿の女性が出迎えてくれた。

 

平日の19時台。メイン通りの店はほぼ満席に見えるくらいに賑わっていたが、一本入ったこの通りはひっそりとしていた。店内にはほかにお客がおらず、「ラッキー!」と思って入店しようとしたら、女将さんが申し訳なさそうに言った。

 

「本日はあまりお料理がお出しできないんですが…」

 

え?と思い話を聞くと、なんと仕入れの都合で海鮮系は全滅だという。じゃあほかには…とメニューを見てみると、海鮮物以外だと出汁巻き卵や枝豆くらいしかなく、夫も私も「・・・・・・」となってしまった。出汁巻き卵も枝豆も大好きだが、それだけじゃさすがに足りない。残念だけどしょうがない。また来ますと言って店を後にした。

 

歩きながら夫と、「あの状況でもお店を開けてるってすごくない?」と言い合った。ネタはないけどやる気はがっつりある。そんなお店のようだ。

 

バリウムに殺意

その後、裏通りも散々うろうろした末、もう一度メイン通りに戻った。時刻は20時を回ったところ。そろそろ酔っ払いが増えてくる時間である。こういう時間帯に混んでいるお店に入ることはできれば避けたいのだが、ふたりとも腹ペコだったので背に腹はかえられぬとの思いで一軒の海鮮居酒屋に入った。

 

入ってみると、個室のお店で思ったほどうるさくはなかった。よかったよかったと思いながら席につき、とりあえずお刺身の盛り合わせとお酒を注文。お通しをつまみながら取り留めのない会話をしていると、それまで普通だった隣の個室の人たちが、急に盛り上がり始めた。

 

「バリウムはやべえよ!俺耐えられなくて廊下でもどしたもん!おえええええ!って。わはははははは」

 

・・・・・・・・・・💢
おえええええ!じゃねぇーーーーーーー!
飲食店で話すような内容か考えろーーー!

 

その後もずっとバリウムの話題が続き、声がでかいので聞きたくなくても聞こえてしまう。一緒にいる人たちはどう思っているのだろうか。若い女性の声もしていたので、もしこれが職場の気乗りのしない飲み会だったりしたら非常に気の毒である。世のおっさんたちよ、若い女の子に嫌われたくないならお酒はスマートに飲みましょう。

 

まあでも、飲食店で下品な話をするのはおっさんばかりというわけでもない。以前、ランチ時の小さな洋食屋さんで、ママさんたちが大きな声で子どものウン◯の話を始めた時はどうしようかと思った。その話題でよくシチューなんか食べてられますねと言いたくなった。シモ系の話はせめて小声でお願いします。

 

気分は震える西野カナ

成田に越してきて、いつも会いたい会いたいと思うのになかなか会えないものがある。市川海老蔵(團十郎)の仕掛け時計だ。

 

成田屋という名の通り、歌舞伎の市川家は成田山と縁が深い。節分には成田山で豆まきをする行事が行われていて、かつては小林麻央さんも毎年来ていたという。

 

駅のロータリーには海老蔵の仕掛け時計がある。私が昔住んでいた時にはなかったものだ。1時間に1回仕掛け時計が動くのだが、引越してきて9ヵ月、まだ2回しか見たことがない。しかもそのうちの1回は調子が悪かったのか、音も鳴って舞台もせり上がっていたのに、肝心の海老蔵人形が出てこないという、残念な結果だった。

 

食事を終えて店を出ると、22時を5分ほど過ぎていた。仕掛けは終わったとこだ。ああ悔しい。また見られなかった。そんなに見たいなら時間を計って見にくればいいじゃんと思われるかもしれないが、そうまでして見たいわけではないのである。たまたま通りかかった時にちょうど見られたらラッキーなのであって、わざわざこのために来るのは面倒くさい。かといって通勤途中にのんきに見ている余裕もないので、結局全然見る機会がない。
(写真は観光協会公式サイトのもの。)

 

いつかこの街を離れるとなった時には最後にちゃんとキミに会いに来るからね!と勝手に約束している。