ふたり暮らし。親日インド人が納得できないこと。
来日10年目にして初
インド人の先輩Nさんがこんなことを言っていた。「私は日本にかなり慣れたけど、結婚式のご祝儀はどうしても納得できない」。聞くと、最近初めて日本の結婚式に招待されたそうで、そこでご祝儀の存在を知ったのだそう。教えてもらった時には、「もしかして私騙されてる!?」と、教えてくれた人を疑ったらしい。
「インドじゃありえない。結婚式は結婚するふたりがお世話になった人をおもてなしするためにやる。お金を取るなんて考えられない。」
「インドでは親戚や友人だけでなく、近所の人たちもみーんな呼んで自宅で大々的に飲み食いする。どんなに小規模でも100人は集まるし、300〜500人もザラ。食事代も何もかもすべて新郎新婦が支払う。お金のないカップルは招待状に「ご家族から1名だけの参加でお願いします」と書いておくと、招待客が察してくれて食べ物を持参してくれたり、親しい友人がプレゼントをくれることもあるけど、基本はみんな手ぶらで参加する。」
「日本の家は狭いから自宅でできないのは理解できるけど、大した人数がいるわけでもないのに主役である新郎新婦とろくに会話もできないなんて、何のためにわざわざ集まるの?料理もあんまりおいしくないしちょっとしか出てこないし、だいたい黙って食べてても全然おいしくない。日本人はあれが楽しいの?」
日本の結婚式については日本人も不満がないわけではない。でもここまではっきり言われると反論もしたくなる。ところが、「でも…」と反論しようとして、彼の意見にまるっと同意している自分に気づき、黙った。たしかに彼のおっしゃる通りなのだ。
パーティーではなく「お式」
日本の結婚式は、単に飲み食いするパーティーではなく、「お式」だ。教会でウエディングドレスを着る、という部分だけ西洋の文化を取り入れて、その他の部分が旧態依然のままだからなんだかおかしなことになっているのだろう。これがもし、神社で和装の結婚式だったのであれば、Nさんも「日本の風習とはこうなのか」と納得がいったのかもしれない。お座敷での宴席なら、外国人から見てもご祝儀袋の存在に違和感がないだろう。
結婚式に行って日本人は楽しいの?という質問には、「…べつに楽しくはないかな。笑」と答えた。披露宴自体はべつに楽しくはない。楽しいのは旧友たちと会えたりすることとその後の二次会であり、披露宴の最中に「楽しーーー!」と思うことなんてない。それどころか、新郎新婦の上司たちの長い挨拶や、素人の微妙な歌や演奏を聴かされたりして、どちらかというと苦痛ですらある。入学式や卒業式と同じで、人生の節目を祝う場という認識でおとなしく座っているだけだ。
毒舌な感想
ミニマリストしぶさんの動画に、しぶさんが人生初の結婚式に参加した時の動画がある。後日しぶさんはべつの動画の中でこう振り返っていた。
「高いお金を払って、1日拘束されて、身支度にもお金がかかって、交通費もかかって、2次会でもお金がかかって、いらない物(引き出物)をもらう。今回はYoutubeのネタにしてもいいって言われたから参加したけど、今後僕が結婚式に出ることはたぶんよっぽどのことがない限りないと思う。」
「今回招待してくれたのはすごくお金持ちの人だったので、めったに行けない高級ホテルで、食事も豪華で、余興もプロを呼んでかなり楽しませてもらった。これなら3万円出す価値があると思ったけど、これだけのことができる人はそうそういない。ゲストをもてなすことよりも、ご祝儀で少しでも元を取りたいとか思っちゃう人はやるべきじゃない。結婚式は大赤字になっても気にしない金持ちだけやればいい。」
「そもそも、結婚したからお金持ってお祝いに来い、っていう考えがどうなんだ?と思う。他人の時間を使うんだから、招待する側がコストを負担するべきじゃないのか。万が一僕が結婚式を挙げざるを得ないとなったら、ご祝儀無しにして、ゲストをもてなす形式にする。自分たちのために時間を割いて来てくれるというだけで嬉しい。」
元の動画はライブ配信で、当然視聴者の多くはしぶさんのファンなため、視聴者からのコメントには同意するものが多かった。「結婚式は堂々と行われるカツアゲ」など、しぶさん以上の毒舌コメントもあった中で、「式に参加してご祝儀を贈るということ自体が相手へのお祝いなので、気持ちよく参加するべき」というコメントもあり、それに対してしぶさんは、「僕ならべつの形でお祝いする。結婚式に出ることだけがお祝いのやり方ではない。」と答えていた。
(しぶさんはご祝儀の金額云々よりも、他人を丸1日拘束することへの嫌悪感が強いのだろう。)
賛否両論あるとは思うが、私もしぶさんの考え方にとても共感する。でもそれは今の私だからであって、若かった頃の私なら、しぶさんの考え方には共感できなかったと思う。自分がウエディングドレスを着ることにももちろん憧れていたが、それとは別に、「結婚式に招待される」ということにも強い憧れがあったからだ。
私がNさんに、「結婚式によばれることも、若い女の子には憧れだったりするんですよ」と言うと、彼は大きな目をさらに見開き、「I don't get it!」と言った。