ふたり暮らし。仕事とコスパ。
慣れた職場
職場Bで働き始めて半年になる。なんだかんだいってあっという間だった。
働き始めた当初は私に対する当たりがキツかった人たちも、今ではごく普通に感じよく接してくれている。おそらくどこの職場にもいる、「新人嫌い」というタイプなのかもしれない。こういう人たちと上手くやっていくためには、とにかく仕事を覚えるしかない。半人前の自分が周囲に迷惑をかけているのは事実なのだから。
何もかももう完璧!とまではいかないが、ひと通りの仕事をこなせるようになった今、職場から苦手な存在はいなくなった。みんなそれぞれ頼りになる先輩たちだ。
最近、新人さんがたくさん入ってきている。その多くは大学生や留学生だが、中には私と同世代の主婦もいる。働く事自体が十数年ぶり、という人もいて、やはりこういう場合は周囲の当たりはどうしてもキツく感じられるかもしれない。忙しい職場だし、搭乗直前の食事になるので、お客様が万が一腹痛をおこしたり、割れた食器で怪我をしたり、あるいは気分を損ねて搭乗しないとか言い出したりすると超大変なことになる。時間通りにお客様を搭乗口へ送り出すのが、私たちに課せられた一番重要なミッションだ。
意外にも、日本人より外国人社員のほうが仕事中の雑談や馴れ合いには厳しい。シフト中はピリッとした緊張感がつねに漂っており、新人さんであっても「入ったばかりなんだからいいのよいいのよ〜」といって寄り添ってくれる人はいない。
1ヶ月でやめた新人さん
いつもシフトが一緒だった日本人の新人さんに、もうすぐ辞めると挨拶されたことがある。「ちょっと私なんかには無謀な職場でした」と。
同じ日本人で年齢が近いこともあり、けっこう親しくしていた。だからつい弱音を吐いたのだと思うが、どう返したらいいのかわからなかった。もう辞めると決めた人に「すぐに慣れますよー」と励ましてもしょうがないし、なんて答えるのが正解だったのだろう。「いやいや、そんなこと…」と困った顔で苦笑いするしかできなかった。
思っていたよりも大変だったと言うので、「何が一番大変でした?」と訊くと、やはり英会話だという。みんな同じだ。「葉月さんはすごいですね、ペラペラで。私はもともと英語ができないので…」とも言われて閉口した。
私がここ半年、英語学習に時間を費やしていることはブログに書いている通りだ。決してペラペラなわけではないし、最初からできたわけでもない。出身は出川イングリッシュだ。外国人スタッフだって、英語が母国語じゃない人がほとんどである。でも日本語も英語も話している。ちゃんと敬語も使い、ファーストクラスのお客様に対して失礼のない接客ができるように日々努力しているのだ。
入って1ヶ月しか経ってない人に「私なんか…」と言われても、申し訳ないが慰める言葉が見つからない。私なんて…というあなたが面接の結果雇われたことは事実なのだから、そこは自信を持ってもいいのに、と思った。
私も入ってから「思っていたよりも大変」とくじけそうになったクチだから偉そうなことは言えないが、ちょっと諦めるのが早過ぎな気がする。もったいない。だってここで働くためには、超めんどっくさい税関講習を受け、複数回のオリエンテーションも受け、その後でようやく初出勤にたどり着くのだ。そこまでやったにも関わらず、そんな簡単に辞めるなんて…と思ってしまう。
とはいえ、彼女も私と同じ主婦パートなので、時給以上の苦労なんてしたくないという気持ちもすごくよくわかる。私の職場Aのように、もっと気楽に楽しくできる仕事はたくさんある。次は合う職場に巡り合えるといいですね!と心の中で応援しておいた。
学生さんの進路
大学生の子たちの進路で多いのは、やはり航空会社だ。地上職も含め、多くの子が内定を貰っている。男の子の中には商社希望の子もいて、共通するのは、みんなが英語を仕事で使いたい人たちだということである。
そんな中で、この春、全然英語と関係ない業種に就職して辞めていった子がいた。最後の日、「みんなみたいに英語ができなくて最初はすごくつらかったけど、頑張ってきてよかったです。こんな私でもやればできるんだと自信を持たせてくださったみなさんに感謝しています。この経験は一生忘れません。」というような感動的な挨拶をしていて、あまりよく知らない子だったのに思わず目頭が熱くなってしまった。ふと見ると、いつもは文句ばっかり言っているフィリピン人のパートさんが引く勢いで大泣きしていた。
たかがバイト、されどバイト
コスパのいい仕事はほかにもたくさんある。飲食業というのは体力的にキツイ仕事なので、コスパという面ではあまりいい職種とはいえない。
でも、仕事というのは、時給では換算できないやりがいとか学びとか、そういうすべての経験を自分の糧とすることで、自分を成長させてくれるものなのかもしれない。そういった意味では、給料だけで仕事先を選ぶのはもったいないことだといえる。
(ブラック企業は論外だが。)
私もここに入るまでは「時給がそこそこよくて、今の自分のレベルで無理なくできそうなところ」としか考えていなかったが、最近では「今の自分にはちょっと難易度高いかも…」という職場をあえて選んでみるのもいいかもなぁと思うようになった。
職場Bでの学びはまだまだ多い。私もみんなに惜しまれて辞めることができるぐらい、この場所でこれからも努力し続けようと思う。