ふたり暮らし。遷都反対。
空が見える喜び
以前住んでいた家はマンションの1階で、ベランダの奥行きが広い家だった。
ベランダが広いと、上の階のベランダによって部屋の中から空が見えない。住んでいる時はあまり気にならなかったが、今思うと部屋の中も暗かった気がする。窓に近づいても向かいのマンションが邪魔をして空が見えず、部屋の中にいると晴れてるんだか雨が降ってるんだか全然わからなかった。よくも悪くも、お天気に左右されない家だった。
今の家はアパートの最上階で、狭いベランダには申し訳程度のしょっぼい庇があるだけ。朝からさんさんと日差しが差し込んでくる。雨も遠慮なく吹き込むのがたまにキズだが、やっぱり空が見えるのは気持ちがいい。しかも周囲に高い建物がないので空もぐーーーんと広いのだ。今の時期は陽が昇るのは早いが朝方はまだまだ涼しくて、爽やかな風と眩しい朝日とで、毎朝すごく気持ちよく目覚めることができる。目が覚めて1時間くらいは、外を見たり朝日の中で本を読んだりして過ごしている。
鳥の声と、遠くに電車の音も聴こえる。そういえばいつのまにか鶯の声がしなくなった。季節が移ったのだ。空気も綺麗で、この家とこの街が今までで1番好きかもしれない。
人のいない公園
お散歩をしていたら、近所にすごく広い運動公園があった。野球場やサッカーコートのある市民公園で、まだフタが閉まっていたがプールもあるようだった。周囲は広い芝生と並木道があり、公園のすぐ脇には林があった。木々には新緑の綺麗な葉っぱが生い茂り、足元に影を作ってくれている。最高気温28℃と暑い日だったのだが、公園の中はとても涼しかった。
しかもこんなに気持ちがいい場所なのに、全然人がいないのだ。ランニングしてるおじいちゃんと、小さい子の三輪車について散歩をしているお母さんとしかすれ違わなかった。あとは芝生のお手入れや掃除をしてくださっている職員さんたちしかおらず、静かで、空いていて、そこまで広過ぎることもなく、最高のお散歩コースを見つけたと思った。
以前は立川の昭和記念公園によく行ったのだが、こっちは死ぬほど広い上に、コースがいろいろ分かれていて日陰のない場所も多く、しかも平日でも人がいっぱいいてこんなにリラックスできなかった。こっちの公園はいい意味で人がいない。今の時間はこんなだが、きっと休日や夕方以降は学生さんたちで賑やかになるのだろう。
小さい神社
近所には人ひとりすれ違うのがやっとくらいの、小さな鳥居のある神社が点在している。以前この街に住んでいた時は駅の反対側で、そっちはこっちよりも新しい住宅街だったのだと思う。散歩してもあまり面白味のない場所だった。駅のこちら側は古い民家も多く、こんなふうに地元に根ざした神社もあり、わくわくするような狭い道も多くて歩くのが楽しい。自分ちのすぐ裏なのに、「この道はどこにつながるんだろう?」と思って行ってみると、うねうね歩いて予想もつかない場所に出たりするのだ。
小さい神社はどこもさっぱりと綺麗に掃き清められていて、地元の人たちが大切にしているのが伝わってくる。境内でくつろぐ猫ちゃんもよく見かけるので、もしかしたら誰かがごはんをあげているのかもしれない。個人的には、すべての猫ちゃんたちにおうちの中で暮らしてほしいと思ってはいるのだが、野良猫のいる風景もまた好きである。
(どうか車道のほうには行かず、ここら辺だけで平和に暮らしてね。)
住めば都とはいうが…
この街に越してきてもうすぐ9カ月。よそよそしかった道も風景も、今ではすっかりなじんだ景色になった。歴史のある街というのは空気が違う。外国人だらけなことを除けば、ここはとてもいいところだと思う。
住めば都とはいうが、私はもう自分の都をよそに移したくない。ずっとここに住んでいたい。せめてこの先5年は転勤がありませんように、と願うばかりである。