ふたり暮らし。さようならを使おう。
「思った…ない?」
職場Aのレジでは、「オイシイ、カッタ、デス!」「taste、ヨカッタ、トテモ、good!」などと言ってくださる外国人が多く、がんばって知ってる日本語を繋げてどうにかして気持ちを伝えてくれようとするところに日々ほっこりしている。
先日来店した中東系の男性ふたり組は、来店した時から笑顔がなく、食事中もずっと無言で、「あのふたり、喧嘩でもしてんじゃない?」と私たち店員に噂されていた。
(余計なお世話だ。笑)
ふたりとも語尾に「デス、マス」を使ってくれる人だった。所々に日本語を使ってくれる人が相手の場合、話しかけられた時に、名詞じゃない部分を脳内で勝手に日本語として変換してしまうようになる。「some salt、クダサイ」とか、「station 、ドコデスカ?」という日本語の使い方をする人が多いからだ。「Can I have シオ?」とか「Where is the エキ?」なんていう使い方をする人はまずいない。
で、その笑顔のない中東系男性に、「オモッタ、ナイ?」といきなり言われた私は混乱した。
「思った…ない?」。え、どっちが日本語だろう?どっちも日本語か?「ナイ?」のほうは「ナイデスカ?」とか「アリマスカ?」と使える人が多いので、普通に考えるとこっちが名詞の何かを英語で言っている可能性が高い。じゃあ「オモッタ」はそのまま思ったでいいのか。もちろん、綺麗な「思った」ではなく「オモタ」という発音だったのだが、どちらにせよ「思った」としか聞こえない。
何を思ったと訊いてるのだろう。べつになんも思ってないけど。あ、もしかして「喧嘩してんじゃない?」と噂していたのがバレているのかも…と思いながら、恐る恐る「What is the "Nai"?」と訊き返してみた。すると男性はしばらく考えこんでから、「…ナイデスカ?」と言い直したのである。やばい、これじゃまるで「タメ口きくな、敬語を使え」と言ってしまったようなもんである。この強面男性に無礼な店員だと思われたらどうしよう!
軽く焦った私は、必死で「オモッタ」のほうを脳内で変換し始めた。オモタ…オモタ…on motor?(なんやそれ!)
すると、それまで黙々と食べていたもうひとりの男性が、こっちを見て「hot water 」と言った。それでようやく「warm water、ナイ? 」と訊いていたのだと理解した。おおー!これでまたリスニング力がひとつ上がりました!みなさん、温かいお湯が欲しい時は「ウォモタ」とぜひ使ってみてください。
別れの挨拶
外国人観光客と接するようになって、すごく久しぶりに言うようになったのが「さようなら」である。ちゃんとした別れの挨拶なのに、日本人の大人同士ではまず使わない。最後にこれを言ったのは小学生の時、という人は多いのではないだろうか。
食事中は一切の笑顔なく無言だった中東系男性たちは、お会計の時も同様で、淡々とやり取りをした。そして彼らがレジを離れる時、こちらを向いて初めての笑顔で「サヨウナラ〜」と言ったのである。ギャップ萌え?ツンデレ?え、強面が急にイケメンに見えてきたんだけど!笑
外国人が「サヨウナラ〜」と言いながら店を出ていく姿は、なんだかとっても可愛らしい。そして、サヨウナラ〜と言われると、こっちはつい「はい、さようなら〜!」と、「はい」をつけてしまう。だって日本人にとってのさようならは、子どもから大人に言う「(先生)さようなら〜!」と、大人から子どもに言う「はい、さようなら〜!」が対になってインプットされているからだ。
さようならって素敵な挨拶だなぁと改めて感じた。大人ももっと使う機会を増やしたほうがいいと思う。
それではみなさん、さようなら〜