ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

病院でベホマは受けられない

ふたり暮らし。病院でベホマは受けられない。
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会社員の発熱

自分の発熱で思い出したことがある。以前夫が高熱を出した時のことだ。あの時はすごくいいお医者さんに出会った。

 

夫は39℃の熱で会社を早退して帰ってきたのだが、なんと上司から「すぐに病院に行って検査して結果を報告するように」と命じられていたのである。

 

いやいや、39℃の人間が病院なんて行けるわけないし!

 

そもそも、一般的には発熱から12時間以上経たないと正確な診断結果は得られないと言われているのだから、発熱ホヤホヤの状態で病院に行ったところで「後日もう一度来てください」と言われるだけである。

 

ちょっと熱が出たぐらいでいちいち病院に行くのは日本人の特徴ともいえる。「日本は保険制度が優れているから」というふうに言われることが多いが、それだけじゃなくて、これは医療利権に群がる人々によって故意に作られた習慣なのだ。1円も生み出さない自然治癒力に頼られるより、せっせと病院に通って薬を飲んでくれたほうが彼らにとっては都合がいいのである。
(そして今やそのご自慢の保険制度は外国人に悪用されまくり、一番必要なはずの高額療養費の自己負担額が上げられる始末。)  

 

病院の先生は回復魔法の使い手じゃない。あくまでも原因特定者である。病院でベホマをかけてもらえるならすぐにでも行くべきだが、そうじゃないのだから自宅で安静にしているのが最善だ。

 

…というようなことを私は一生懸命力説したのだが、会社員である夫は上司の命令はどうしても無視できないようで、熱で回らない頭で感染症検査を行っている発熱外来を検索していた。

 

とりあえず病院へ

自宅から1番近い病院へ行くことにし、寒気で震える夫を車に乗せ、季節は夏だったが冷房もつけずに病院に送って行った。こっちは汗だくだが、さぞかし夫は寒気で涼しいのだろうなと思って隣を見ると、夫は震えながら大汗をかいていた。人間の身体ってほんとうに不思議。

 

病院に行って待つこと1時間。結果はもちろん「後日もう一度来てください」だ。ほーらやっぱり。一応、熱冷ましの処方箋はもらったが、薬はもらわずに帰宅した。

 

帰宅して夫はすぐに職場に電話をかけた。「明日以降じゃないと検査できないそうです」と。はたから見ていたらただの茶番だ。無意味だとわかっていながらも、「病院に行ったのですが検査できませんでしたー」という報告をするためだけにわざわざ病院に行った夫。なにこの無駄な時間は。その時間寝てたほうがよっぽどいいじゃないか。

 

スタミナ切れでベッドに倒れ込んだ夫の服を脱がせ、汗を拭き、 マヌカハニーを口につっこみ、梅干し生姜湯を飲ませ、アイスノンの上に寝かせて隔離。明日も病院に連れて行くのかー…と面倒に思いながら、その日私はリビングで寝た。

 

夫には私がいたからよかったものの、これがもしひとり暮らしだったら詰む。39℃の熱でひとりで病院に行って帰ってくることなんて、どう考えても無理だと思うのだが、果たして夫の上司は、熱を出したのがひとり暮らしの部下であっても病院に行けと命じたのだろうか。

 

いい先生

翌日は前日の病院が休診日だったため、べつの病院に行くことになった。

 

朝の時点で夫の熱は37℃台。インフルエンザかと思ったが、昨日より下がっているところをみるとただの風邪だろう。これって病院行く必要ある?と思いながらとりあえず夫を病院に送って行った。

 

その日に行ったのは大型マンションの1階にある新しい病院だ。まだそれほど知名度がないせいなのか、とても空いていたらしく、30分かからないくらいで出てきた夫。「どうだった?」と訊くと「陰性だった」とのこと。まあそうよね。でもよかったよかった。と思い帰路につく。

 

帰りの車の中で夫が、「次熱が出た時もさっきの病院に行こう」と言うので「なんで?」と訊いたら、「すごくいい先生だったから」と。

 

先生「今日はどうしましたか?」

夫「昨日から熱がありまして…」

先生「今はどうですか?」

夫「だいぶマシになりました」

先生「順調に回復しているようですね。今日はどうして病院に?

夫「感染症の検査をしてもらおうと…」

先生「うーーーん。必要ないと思いますけどねぇ。職場でやるように言われたんですか?」

夫「はい」

先生「…じゃあやりますか」

 

という感じだったそうだ。検査結果を見て、先生は「処方箋を書くことはできますが、薬なんて飲まなくても寝てれば治ります」と言い、夫は薬を断ったため、そこで診察は終了だった。感染症検査をしなければ5分もかからなかっただろう。

 

「今日はどうして病院に?」

発熱して病院に来た患者に、普通は「今日はどうして病院に?」なんて訊かない。でもこの先生は訊いた。「発熱したぐらいで病院に来なくていい」という考えが根底にあるからだ。

 

昨日発熱し、今日は昨日より下がっている。つまりそれはただの風邪である。一番の治療は自宅で安静に過ごすことだ。 インフルエンザだって自然治癒するものと言われているのだから、「発熱したら寝る」以上の治療法なんてないのである。熱を出し切り、胃の中を空っぽにし、身体をリセットする。これをやってほしくて、私たちの身体は定期的に熱を発するのかもしれない。

 

新しい病院の、比較的若い先生だったらしいのに、古い町医者のおじいちゃん先生のような、昔ながらの診療をする先生。私ももし病院に行くことがあったらそこに行きたい、と思ったのであった。
(引越しちゃったけど…)