ふたり暮らし。ダブルワークのメリット。
同じ職場に居続けると…
ダブルワークを始めたと言うと、「大変じゃない?」とよく訊かれる。たしかに慣れるまでは大変かもしれない。でも慣れてしまえば1箇所で働くよりも圧倒的に楽だ。なにが楽なのかというと、ずばり人間関係である。
私はこれまでも転勤族ということで、職場で深く関わらないスタンスを取ってきた。言い方は悪いが「腰掛け」の存在だったのだ。卒業のある学生と違い、主婦のパートは長年同じ所で働く人が多い。そうすると嫌でも人間関係はだんだん濃密になっていく。それが苦手な私は、最初から「転勤族です」と宣言して、近い将来いつかいなくなる人間だということをアピールするようにしていた。そうすると、ずっとよそ者という認識を持ってもらったまま働くことができる。
ところが、以前いた街ではコロナ禍で転勤がなくなり、5年も同じ職場にいたため、職場でのよそ者感が薄れてしまった。すると最初は付かず離れずでうまくやってきた人の中に、自己開示しない私を良く思わない人が現れ始めたのである。いくら仕事上の付き合いだけとは言っても、やはり付き合いが長くなるほど自分をオープンにしていかないとスムーズな人間関係は続かないし、仕事にも支障が出るようになってしまう。結局、最後のほうは人間関係に悩まされていた。
よそ者は居心地がいい
次の転勤が必ずしも2〜3年でくるとは限らないと学んだ私は、5年ぶりに新しい職場に来て、「ここではどういうスタンスでやっていこう?」と悩んでいた。踏み込んだ人間関係を作りたくないという気持ちと、多少はお互いに踏み込まないと、とくに主婦同士はうまくやっていけないという気持ちとでグラグラ揺れていた。
でもダブルワークを始めたことで図らずもその悩みは消えた。どちらの職場でもがっつりシフトに入らないので、メインではなくサブ的な立ち位置になれたからだ。
飲食店というのはだいたいどこも、長年勤めている副店長格のパートリーダーがいないと回らない。ホールの社員は店長1人だけという場合が多く、店長の休みには必ずパートリーダーの人が必要になるからだ。そして店長に何かあったら、たとえ休みであってもパートリーダーが駆り出されることになる。
本来なら、本社がべつの店舗の社員を回すのが筋では?と思うのだが、どこの店舗も人手に余裕はないし、普段接客をやらない部署の社員を連れてこられても困るのでそうするのが最善策ではあるのだが、社員でもないのに店の営業ができるか否かをパートリーダーの肩にかけるのは負担が重すぎると思う。でも、それで成り立っているお店は多い。
パートリーダーというのは会社にとってとてもありがたい存在だ。それは、言い換えればとても都合のいい存在ともいえる。パートリーダーが責任感の強い人であればあるほど、会社側はその責任感によりかかる。そしてその雰囲気はほかのパートたちにも伝播し、パートが時給以上に責任のある仕事をやる→会社はますますパートによりかかる、という悪循環を生む。日本企業の悪い部分だと思う。
厄介なのは、そのやる気と責任感を全員に求めるようになることだ。大学生や高校生ですら、「テスト前なのにシフトを休みにくい(嫌な顔をされる)」と悩んでいたりする。ひどいところだと、パートやバイトに閉店作業を任せ、店長は先に帰る店すらある。
私はそういうのが嫌なのだ。頼られるのが好きな人や、責任ある仕事を任されたいタイプの人もいるだろうが、私は違う。時給に見合わない仕事は引き受けたくないし、責任も負えない。でも職場全体の雰囲気がやる気と責任感に満ちているとそうも言ってられなくて、内心ぶつぶつ言いながら無理に仕事を引き受けてきたこともあった。
ところが、ダブルワークを始めると、どちらの職場でもなんとなくよそ者として見られるということに気づいた。それはタイミーの常連の人に対する接し方と近い。「仕事仲間ではあるけれど、無理を言える身内ではない」という感じだ。すごく居心地がいい。
ダブルワークをする人は意外と多い
職場AにもBにも、ダブルワークをしている人がほかにもいる。
月〜金まで普通に会社員として働きながら土日のシフトに入る若い人、同じ接客業でシフト勤務をしながら、シフトのない日にタイミーで働くフリーター、フルリモートで働きながら週末の夜だけシフトに入るお父さんお母さん。私と同じように106万〜130万までに調整するために掛け持ちしている人もいるようだ。
フルタイムの本業を持っている人に対しては、ちょっと働きすぎなのでは…と心配になるが、働けるうちに少しでも多く稼いでおきたいと思うのはすごくよくわかる。私も最近知ったのだが、今は公務員でも副業ができるようになったらしい。それだけ日本の先行きが危ういということなのだろう。自分の老後は自分でなんとかしろ、と公務員ですら暗に言われているのだ。
私自身、この国の政治が信用ならないのでダブルワークを始めたわけだが、やってみると自分にとっては合っていることがわかり、気楽に働けている。どちらの職場も募集は「週2回、1日4時間〜」だったので、その条件をちょうど満たすくらいでシフトを入れている。体力的にはもっと多く入れられるのだが、前半で調子に乗って稼ぎすぎると後半のシフトに入れなくなるので普段は抑えている。この年収の調整が、面倒っちゃ面倒ではある。
そして納得いかないのは、106万を超えると交通費も年収に含まれるということ。ちょっと意味がわからない。交通費はただの必要経費なんだが。交通費に税金かけるのはどう考えてもおかしいのにそれがまかり通る日本。車通勤している人なんか、いったい何重の税金を取られているのだろうか。そのうち電車代にも「乗車税」とかいって新しい税を作ってくるんじゃないだろうか。
ダブルワークのススメ(?)
ダブルワークを始めたと言ったら、母に「…借金でもあるの?」と本気のテンションで訊かれた。母の世代の人にとっては、「仕事の掛け持ち=お金が足りない」にダイレクトにつながるのだろう。まあ切羽詰まっていないだけで、たしかにその考えは当たっている。笑
私にとってダブルワークは先述したようなメリットがある。こんなことを考えているのは少数派かと思っていたが、ほかのダブルワーカーたちも「気分転換になる。ストレス解消になる」と言っていたりするので、こういうふうに感じる人は意外と多いのかもしれない。 ダブルワークは閉塞された人間関係のガス抜きにもなると思う。
本業でストレスが溜まりがちな人や、体力に自信のある人にはオススメの働き方だ。