ふたり暮らし

明日は明日の風が吹く

優秀な外国人たち

ふたり暮らし。優秀な外国人たち。
f:id:asukaze827:20250210120156j:image

シゴデキなネパール人

職場Bには優秀な外国人従業員が大勢いる。彼らの中には日本語を話せるだけでなく、ひらがなの読み書きができる人までいる。漢字はさすがに書けるところまではいかないが、記号のように形を覚えてその意味を暗記し、「読む」ことはできるようだ。

 

そんな優秀な外国人従業員のひとりがネパール人のRさんだ。

 

Rさんは私より1ヶ月ほどあとに入ってきた人なのだが、とてもそうは見えない。仕事を覚えるのがとにかく早く、あっという間にベテランの人たちと肩を並べるほどにシゴデキな男に進化した。

 

Rさんは来日して8年くらいだという。母国の大学で国際ビジネスを学び、来日後は日本語学校に通いながら日本の大学でも国際ビジネスを学んだそうだ。「日本の大学で学んだことも母国で学んだことと同じだったけど、同じことを日本語で学べたのはすごく良かった」と言っていて、なんかすごいなぁと思った。私だったら「なんだ、同じ内容じゃん。じゃあもういいや。やーめた」となりそうである。

 

そんな優秀なRさんだが、立ち位置としてはフルタイムパートだ。今すぐにでも一流企業の正社員になれそうなのに、なかなかそれは難しいらしい。今までいくつもバイトを掛け持ちしながら生活してきたそうだ。最近結婚し、共働きになったことによって以前より生活が安定したらしく、これからは今の職場で正社員登用を目指し、腰を落ち着けて働くつもりなのだそう。

 

Rさんのメモ

そんなシゴデキなRさんだが、おこがましくも一応私のほうが先輩なため、いくつか業務を教えたことがある。

 

その際、Rさんは自分用のメモを日本語で書いていたので、「もう日本語のほうが得意なんですか?」と訊いたところ、「いいえ、ネパール語のほうがずっと速く書けます。でももし自分のメモが間違っていた時、葉月さんにチェックしてもらうのに日本語じゃないとわからないでしょ?だからなるべく日本語で書くようにしてます。」と言っていて、シゴデキな人は細かいところまで気を配っているんだなぁと関心した。

 

業務はそれぞれ1回ずつしか教えていないのに、Rさんはすべて1回で覚えようと真剣だった。疑問点はその場で何度も確認し、「次からはこの作業私にやらせてください」と言って、2回目以降はほんとうに全部ひとりでやってくれた。

 

それをべつの人に話すと、その人も「Rさんはまじですごい。覚えるのが早いだけじゃなくて作業スピードもめっちゃ早い。みんなびっくりしてる」と言っていて、Rさんのシゴデキさは入社ひと月で知れ渡っているようだった。

 

外国人と働く弊害

この職場にはインド系外国人が多い。比率としてはおそらく一番多いだろう。その次がインドネシアやフィリピン系の人たちで、その他の外国人と日本人が同じくらいである。

 

外国人の多い職場ってどうなんだろう?更衣室とか汚かったりしないかな?何か盗まれたりしないかな?と不安だったのだが、少なくとも掃除は行き届いていて、事務所や更衣室の使い方もきれいだ。これは空港から厳しく指導されているおかげだろう。

 

盗みに関しては、正直言って用心する必要がある。私物のペンとかうっかりそのへんに置くと、横にいた外国人従業員がすごくナチュラルに自分の胸ポケに入れる。「それ私のです」と言うと「あらごめんね」とすぐに返してくれるが、こんなに自然な動作で盗みを犯すことに驚いてしまう。

 

ロッカーの鍵は必ず施錠すること、ロッカーに入らない私物は持ってこないこと、と社員から言われているが、分厚いダウンコートなどは共有のハンガーラックにかけている人が多く、そこでも時々、

日本人「それ私のダウンなんだけど」
外国人「間違えちゃった」

というやり取りをしているのを見る。

 

盗みを犯すというと日本では極悪人のイメージが強いが、外国人は盗んだことがバレても悪びれない。たぶん彼らは盗んだコートでも堂々と着てくるだろう。それぐらい日本人とは感覚が違う。もちろん全員が全員そうではないが。

 

従業員のやる気の引き出し方

日本のバイトだと、ちゃんと仕事を覚えても、時給は良くて100円、ひどいところは2〜30円上げてくれるだけで、仕事内容に見合っていないことが多い。実質店長と変わらない仕事を任されているパートリーダーでさえ、時給は入りたての高校生と200円しか変わらない、なんてこともよく聞く。

 

その点外資系はきっちりしている。職場Bでは2ヶ月間の研修が終わると一気に300円アップする。当然、一人前としての仕事を求められるようにはなるが、それは日本企業のバイトも同じである。

 

日本企業である職場Aでは、本人の持ち前のやる気や責任感に頼った「やりがい搾取」をする傾向があり、外資系企業である職場Bは、たとえバイトでもスキルに応じて対価を払い、会社が従業員のやる気と責任感を引き出そうとする気概を感じる。

 

だからなのか、外国人従業員の仕事に対する意欲と向上心は日本人よりだいぶ強い。1日でも早く仕事を覚え、もっと責任ある仕事を任されるようになりたい!たくさんお金を稼ぎたい!と、お給料がしっかりモチベーションになっているのだ。日本のバイトで「時給アップがモチベーションになってます!」ってあんまり聞いたことがない。ディズニーのバイトなんてその典型例だ。「仕事のやり甲斐」をモチベーションにしろと言わんばかりの時給設定である。

 

インドネシア人の女の子

私と同じタイミングで入社したインドネシア人の女の子がいる。社員のDさんに「日本語が難しい」と泣きついていたあの子だ。↓

asukaze827.hatenablog.com


知り合いの日本語の達人(なにそれ?笑)から日本語の訓練を受けているそうで、もともと日常会話に困らない程度には話せる子だったが、ここ2ヶ月で「恐れ入ります」「〜でございます」「よろしければ〜しましょうか」「確認してまいります」など、スラスラ言えるようになった。さすがに謙譲語・尊敬語・丁寧語の区別まではついていないので、私にもそんな感じで話しかけてきて「お、おう…!笑」となるが、それでもその努力する姿勢には尊敬してしまう。

彼女は医療系大学の学生だ。外国人留学生が7割以上を占めていると言われている大学で、駅前の一等地に建つ、最新設備を備えた新しいキャンパスだ。その建設にあたっては市議会で揉めに揉めたという背景を持ついわくつきの学校でもある。私が昔住んでいた頃、選挙でちょうどその建設の是が非が争点になっていた。

 

日本人の税金で建てられたまるで外国人のための大学。インドネシア人のその子は日本の奨学金も受けている。正直、日本人として「それってどうなのよ?」とは思うのだが、勉強熱心なその姿勢を見ているとそんな気持ちが薄れていくのもまた事実である。きっと大学でも優秀な学生なのだろう。

 

優秀な外国人たちは他民族国家への布石

コンビニも飲食店もスーパーも、今や外国人従業員のいない店舗を探すのは難しい。いいかげんな人も中にはいるだろうけども、ほとんどの外国人は真面目に仕事をしている。そして彼らは日本人である私よりもずっと優秀だ。

 

成田に越してきて外国人の知り合いが一気に増え、自分も英語を学ぶようになり、なんか気がついたら国際化の波に乗せられてしまっている。日本が大好きで日本が世界一いい国だとつねづね思っている私。同じように思ってくれる外国人が増えることは嬉しくもあるが、日本が他民族国家になってしまうことへの抵抗感のほうが今はまだ大きい。

 

でもここで暮らし続けていくと、その抵抗感が薄れていってしまうような気がする。真面目で優秀な外国人を大量に日本に呼び寄せることは、他民族国家へ移行するための、効果的な布石なのかもしれない。