ふたり暮らし。引越しに向けて。
来た時よりも美しく
夫の母が以前住んでいた中古マンションを売った時の話。築年数自体は古いマンションだったが、リフォーム済みの物件で、義母が入居した当時も普通に綺麗な部屋だった。
義母は7年以上そのマンションに住み、その後売る時に査定に来た不動産屋さんに「…ほんとにここに住んでます?」と訊かれたそう。それぐらい生活感がなく、物の少ないピカピカな部屋だったのだ。購入希望のご家族が見学に来た時も、「古いマンションって聞いて来たのに、ほぼ新築みたいで驚いた」と大変喜ばれたらしい。
「来た時よりも美しく」というのは義母の信条だ。その信条の通り、義母のマンションは私たちが遊びに行くたびに前回よりも綺麗になっているようだった。昔から雑巾一枚でどこでも掃除をする義母。巾木の上や壁も定期的に拭く、ということを私は義母を見て学んだ。
そんな義母に大いに影響されている私は、今の家を引越す時には「来た時よりも綺麗にして出よう!」とひそかに決めていた。夫の会社は、敷金や礼金などの初期費用はもちろん出してくれるが、「退去の際に足が出たらそれは自分で払ってね。でももし敷金が余ったらあげるよ」という決まりなので、いかに敷金を使わずに退去できるかが重要だ。
(姑息だな〜と我ながら思う。)
なので当然、家は超大切に使っているが、今回は引越しが決まってからさらに掃除魂に熱が入り、「夫の母みたいに、不動産屋さんが驚くくらいピカピカにしてみせる!」と意気込んでいる。
ここ数日、いつもより念入りに掃除をしながら、この家で過ごした時間を思い出してしんみりしている。同じ街に5年も住んだのが初めてなら、同じ家に5年住んだのも初めてだ(実家を除いて)。引越して来た当初とは家具の配置も物の数も違い、試行錯誤しながら暮らしてきたんだな〜と、感慨深い思いで部屋の中を見回してしまう。
新居の内見
昨日、引越し先の物件を初めて実際に見て来た。今住んでいるところよりずっと田舎なので、駅の大きさの割には人が少なく、比較的暮らしやすい街だ。道も広くて、駅まで実際に歩いてみたら私の歩幅で8分かからなかった。不動産屋さんの表示に偽りはないようである。
(ただし私はかなりの速足だけども。笑)
この街は昔から転勤族の多い土地柄で、賃貸物件はたくさんあるにも関わらずつねに争奪戦らしい。今回奇跡的にキャンセルが出た部屋も、私たちが電話で押さえてもらった直後にべつの内見希望が入ったくらい、次から次へと埋まってしまう地域とのことだ。
今回は不動産屋さんが機転を利かせてくださったおかげで、なんとか無事に家を決めることができたが、もし今後ふたたびこの街に転勤になってしまった時のことが、今から若干不安である。
食材をせっせと消費する日々
通常2年ほどで転勤があったのに5年もなかったせいですっかり油断していた私は、転勤の多い季節だというのに冷凍庫をパンパンにしていた。今はそれをせっせと食べ続けている。
ちょうどお肉も干物もまとめ買いしたところで辞令が出たと夫から連絡があり、「え、どうすんのこれ…」と膝の力が抜けそうになってしまった。とくに干物は千葉県からまとめて取り寄せているため、どうがんばっても食べ切れる量ではない。どうすんのと言ったってクーラーボックスで運ぶしかないのだが、遠方なので引越しは2日がかりだ。冷蔵庫の電源を入れて稼働させるまでに丸1日以上かかる。せめて真冬の引越しだったら…と考えずにはいられない。
転勤族というのはこういうリスクもあるのだ。
(自業自得ですね…)
大好きだったお店にご挨拶
冷凍庫の中味を思うと外食してる場合じゃないのだけども、新しい家を見て来た帰りにものすごく好きだったお店に最後の食事に行ってきた。店主さんはとても残念がってくださり、「もしこの先移転することがあったら必ずお知らせします」と言って連絡先も交換してくださった。
このお店に通えなくなることが、この街を離れる上で一番寂しいことかもしれない。泣
「一期一会」。引越しが多いとこの言葉を実感することは多い。今までに「出会えて良かった」と思う人や場所はたくさんある。でも離れてしまうとその気持ちは薄れていく。とくに私は人間関係に対してドライなので、切り替えが早い方ではあるのだが、とはいえこれまでに出会った人たちのことを忘れてしまったわけではない。
この先出会う人や場所も、私はきっとずっと覚えていると思う。将来夫が定年退職したら、かつて住んでいた街を巡るツアーをしてみたいと思っている。